文部科学省が定期的に発表している、「海域モニタリング結果」だが、8月2日付けの「宮城県・福島県・茨城県沖における海域モニタリング結果」やそれ以前の観測結果も、見ると観測海域(各観測点で表層と深度100mのようだ)での放射線能濃度はすべて「不検出」となっている。(文部科学省海域モニタリング結果

これが福島原発事故での海洋汚染の実態を正確に表しているのであれば、海洋に漏出した放射性物質は広く拡散して海は全く問題の無い安全な状態になっていると見えよう。

もしそうであれば、福島原発で故障ばかり起こしている汚染水浄化装置など敢えて使う必要など無く、汚染水はどんどんと海に流しても拡散してしまうから問題無いことになる。

現在のモニタリングは海底土については検査していないし(海底土の検査結果も出ているので、”していない”と言うと間違いだが、これで良いのか?何の為に放射能汚染の実態を把握せねばならないのか?守るべきは何なのか?ということだろう)、海水の放射能濃度観測も簡易法による測定であり、その精度が粗いのだという。

文科省は何のためにこんなザルみたいな観測を何ヶ月も続けて、国民に向けて”結果”を知らせているのだろうか? いろいろ考えさせられる。

◇◇◇日本海洋学会の提言◇◇◇

福島第一原子力発電所事故に関する海洋汚染調査について(提言)
平成23 年7 月25 日
日本海洋学会 震災対応ワーキンググループ

今般の福島第一原子力発電所の事故は,海洋へも深刻な影響を及ぼしている。このよう
な事態に際して,海洋汚染の実態を調査し,結果を速やかに国内外に公開していく必要が
あることはいうまでもない。私たちは,こうした調査や情報公開は,政府以外の組織も含
めた我が国の海洋関係者が負っている国際的責務であると認識している。
東京電力(株)は,3 月21 日に発電所放流口付近の海水の放射能測定を開始し,翌22 日
以降は発電所南16km までの複数の海岸で採取した海水の放射能測定を実施している。4 月
2 日からは沖合15km,4 月17 日からは沖合3km および沖合8km の観測点を追加するなど,
測定対象観測点を順次拡大させてきた。一方,文部科学省においても,3 月23 日に発電所
沖合30km のライン上での放射能モニタリングを開始し,同様に対象観測点を順次拡大して
きた。これらの調査には海上保安庁,(独)海洋研究開発機構,(独)日本原子力研究開
発機構も参画した。
5 月6 日には,文部科学省および水産庁から「海域モニタリングの広域化について」の発
表があり,放射能の拡散に対応した観測の広域化の方針が示された。これまでの調査を担
当してきた各機関の他に,水産庁,(独)水産総合研究センター,(財)海洋生物環境研
究所,(財)日本分析センターなどが加わった体制となり今日に至っている。これらの調
査に携わってこられた関係者のご尽力に心から敬意を表する。
日本海洋学会においても,震災対応ワーキンググループを4 月に設置して検討を重ね,5
月16 日に観測サブワーキンググループによる「福島第一原子力発電所の事故に起因する海
洋汚染モニタリングと観測に関する提言」をとりまとめて発表したところである。この中
で,今後の望ましい調査項目,海域,調査頻度,調査体制について提言を行った
(http://www.kaiyo-gakkai.jp/sinsai/2011/05/post-4.html)。
5 月6 日の文部科学省および水産庁の発表で示された調査海域の拡大方針は,上記の私た
ちの提言の考え方と概ね合致するもので,歓迎すべきものである。しかしながら,5 月以降
の沖合観測のデータとして公表された値の大多数は「N.D.」(Not Detectable: 不検出と
説明されるが,正確には検出限界以下とすべきである)とされている。これは緊急時の簡
易法による測定を行っているためであり,数Bq/L(1 リットルあたり数ベクレル)レベル
でも不検出とされる[例えば,文部科学省が発表している「宮城県・福島県・茨城県沖に
おける海域モニタリング結果」(5 月20 日~)における検出限界値は,ヨウ素が約4Bq/L,
セシウム134 が約6Bq / L,セシウム137 が約9Bq/L とされている]。事故前に,文部科学
省の「海洋環境放射能総合評価事業」において(財)海洋生物環境研究所が実施してきた
調査の結果によれば,福島第一原子力発電所沖合海域の海産魚介類のセシウム137 の濃縮
係数は100 倍を超えるものもあった。すなわち,仮に不検出として発表されている数Bq/L
のセシウム137 が含まれる海水であっても,特定の種類の魚介類が十分長い時間生息すれ
ば,生体組織に数百Bq/kg(1 キログラムあたり数百ベクレル)のセシウム137 を含む可能
性がある。このような仮定は,現段階においては必ずしも非現実的とはいえない。魚介類
の放射性セシウム(セシウム137 およびセシウム134)についての暫定規制値が500Bq/kg
であることを考慮すれば,数Bq/L レベルの放射能で汚染された海水の拡がり方に関する情
報は極めて重要なものといえる。
今回の事故以前に実施されてきた海洋中の放射性セシウムに関する大多数の研究では,
簡易法ではなく,高感度分析法による測定が用いられてきた。高感度分析法ではγ線スペ
クトロメトリーを用いて,バックグラウンドの影響に十分配慮した上で長時間の計数を実
施することや,大量の海水から微量のセシウムを濃縮することにより,海水中の放射性セ
シウムを,mBq/L[リットルあたりミリベクレル(1000 分の1Bq)]以下のレベルで測定す
ることができる。
事故後の時間経過につれて,発電所周辺海域の海水中の放射能レベルは低下しつつある
が,数Bq/L レベルの汚染海水は広い範囲に拡がりつつ移動している可能性もある。先に述
べたように海洋の放射能汚染の実態を明らかにすることは我が国の責務であるとともに,
食品としての魚介類の安全性の評価にも大きく影響する。既に複数の外国調査船が我が国
周辺海域で放射能調査を実施しているが,これらの調査においても,少なくとも一部の放
射能分析は高感度法によって実施されている。これら諸外国の調査データはいずれ発表さ
れることになろう。我が国の研究機関においても,自主的な研究の一環として,一部の航
海では高感度分析法による測定を行いつつあるが,広範囲の海域を網羅的に調査する体制
はとられていない。
日本海洋学会は,海水の高感度放射能分析法に関わる研究者間の科学的かつ技術的情報
の交換に協力し、適切な分析手法を導入できるよう支援している。政府が実施するモニタ
リングにおいても高感度放射能分析法を導入するよう,ここに提言するものである。日本
海洋学会はそのために協力を行う用意がある。

http://www.kaiyo-gakkai.jp/sinsai/2011/07/post-14.html
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