テヘランで核開発関係の科学者が何者かに爆殺されたとのニュース。(引用新聞記事下記)

殺害されたこの核科学者は、Natanzのウラン濃縮工場の主要人物であったという()(色々な肩書きを持つ人だったようだが、WSJによれば、Natanz核施設のDeputy Director of Commerceで、核開発資材調達の責任者だったという)。

以前にもイラン国内では、核開発関係者が何者かに暗殺されたり、核関連工場で謎の爆発事故などが起きていると言う。

昨年11月のIsfahan近郊の核関連施設での爆発も、イスラエルによるものと信じられているようで()、証拠は無いだろうが、モサドなどのイスラエル特務機関の暗躍が指摘されているようである。

嘗て、フセイン政権時代のイラクが、原子炉施設を稼動させようとして、イスラエルに実力阻止されたことがあった。

当時イラクはフランスから原子炉を輸入しこれを稼動させようとしていたのだが、イラクの核開発に危機を覚えたイスラエルは、外交努力では埒が明かぬとみるや、輸出される原子炉器材をフランスなどで爆破したり、関係していたエジプト人原子力科学者を暗殺したりしたという。
それでもイラクは原子炉建設を継続したので、核燃料が装荷される直前の1981年6月7日、イスラエルはこれを長躯空爆して破壊している。

イラクの原子炉までは片道500マイルはあるようであり、攻撃隊の8機(F-16)と制空援護の6機(F-15)は往路帰路共、ヨルダン、サウジといった”非友好国”領空を飛行する必要があった。
両国の国境上空を飛び、ヨルダン側にはサウジ空軍機と擬装し、サウジ側にはヨルダン空軍機に擬装して飛行し、どちらからも迎撃を受けることは無かったという。

攻撃侵攻したイラク領空では超低空飛行でレーダ補足を回避し、目標上空でポップアップして、16発の2,000ポンド爆弾を叩き込み、建設中の原子炉を破壊している。

イラク側はこの攻撃を全く捕捉することが出来なかったという。

パーフェクトな攻撃の成功は、事前の周到な準備と、猛訓練によるイスラエル空軍の高い技量によるものだったろう。
「実戦は訓練のように、訓練は実戦のように」と言われるが、訓練以上の技量を実戦で発揮出来る理屈はないわだが、イラクの原子炉攻撃をシュミレートした訓練では、3名の殉職者まで出したというから、”訓練が実戦以上だった”わけで、猛烈な集中訓練だったようだ。

イスラエルにとっては、国家の存亡がかかっているという認識であったろう。

2003年のスペース・シャトル「コロンビア」の事故で殉職した、イスラエル初の宇宙飛行士Ilan Ramon大佐が、当時一番若いF-16パイロットとしてこの攻撃に参加していたという。(
被弾や故障の場合は、敵性地に取り残されることになるのであるから、”腕も頭もしっかりした者”を選抜したのだろう。

当時このイスラエルの武力使用は国際社会からは非難されたが、フセイン・イラクは倒壊するまで結局核開発に手を出す事は出来なかった。

民族抹殺の危機を実体験しているユダヤ人の国家であるイスラエルの、危機への意識というものは、他者とは違うものがあるのであろう。
彼らは、”アウシュビッツ”を忘れることはないのであろう。

Operation Opera (Wiki)

イランであるが、イスラエルに空爆されるのを警戒して核施設は地下だという。

先日新聞報道にあった、ウランの20%濃縮工程を進めている「中部コム近郊のフォルドウ」(Fordow, Qom)の核施設というのは、Google Earthで見ると、昨年には地下施設周囲に2重のフェンスも設けられているようである。

ISISによるとQom近郊にある核関連地下施設というのは2箇所指摘されている()。 この山岳丘陵地帯は軍施設地帯だといい、周囲には小型のシェルターが無数に存在しているのが見える。
シェルターは一見弾薬庫のそれのように見えるが、それにしては数が多すぎるので、弾道ミサイルなどの格納シェルターといったところだろうか。

Qomの地下核施設周辺には、経空攻撃による被爆を想定した、対地、対空などのミサイル部隊が相当数シェルター陣地に展開しているのだろう。

イランの場合は、地下に核関連施設が分散して建設されているようである。 核燃料が装荷された原子炉を攻撃破壊するのも核物質漏洩による影響が大きく、難しいであろう。

イスラエルは2007年にも建設中のシリアの原子炉施設を空爆により破壊しているが()、イランの分散された地下核関連施設を空爆により破壊することは、かなり困難だろうか。


2011年3月26日の衛星写真という、Fordowの地下核施設。周囲に広大な2重のフェンスが設置されているようである。
軍施設地帯内で、さらに厳重な警備施設というのは、”純粋な平和利用”と解釈することは一般にはかなり難しい。
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2009年10月3日撮影という同上施設。
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もう一箇所として指摘されているFordowの地下核施設の入り口。
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◇◇◇引用;読売新聞

イラン核科学者、車に爆弾投げ込まれ死亡

【テヘラン=五十嵐弘一】イランのファルス通信などによると、首都テヘランで11日、爆弾テロ事件があり、核科学者のモスタファ・アフマディロシャン氏(32)が死亡した。

同氏が乗る乗用車にオートバイが近づき、爆発物を投げ入れたという。

同氏は、中部ナタンツにある核施設の幹部だったとされ、治安当局は、イランと敵対するイスラエルの犯行だと主張している。

イランでは、2010年に2度にわたり、核科学者が爆弾テロで死亡する事件が起きている。

(2012年1月11日22時48分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120111-OYT1T01247.htm
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◇◇◇引用朝日新聞

核施設勤務の大学教授が爆死 イラン「米国など関与」

イランの首都テヘラン北部で11日朝、車が爆発し、イラン国営通信は大学教授のモスタファ・アフマディロウシャン氏と運転手が死亡したと伝えた。同氏の専攻は化学工学。中部ナタンズのウラン濃縮施設でも勤務していたという。

 背景は不明だが、ラヒミ第1副大統領は「帝国主義者たちの工作員が関与した」と述べ、イスラエルや米国が関与したテロとの見方を示した。

 報道によると、バイクに乗った男がマグネット式の爆発物を車に付着。その直後に爆発が起きたという。イランでは2010年1月と11月にも、似たような手口で核科学者らが爆死する事件が起きている。(テヘラン=北川学)

http://www.asahi.com/international/update/0111/TKY201201110560.html
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