1月末に続くIAEAの2月21・22日の訪問でも、イランは核兵器開発が疑われる施設(Perchin)への査察を拒否したという。(

イランは高濃縮ウラン(HEU)の製造を継続しているといい、朝日新聞(引用下記)によれば20%HEU保有量は現在13.8kgに達しているという。

通常の原子力発電用燃料は数パーセント程度の低濃縮度であるから、20%という「Weapon Usable Grade」のHEUをイランは一体何の”平和利用”のために製造しているのか?大いに疑問が湧くところだろう。

HEUは原子力動力艦艇の燃料に使用されたり、研究用に使用されることはあるだろうが、イランには原子力艦艇など勿論無いし、発電用原子炉も輸入に頼り自国での開発能力は無いのだから、何かの研究開発用にHEUがこれほど大量に必要な筈も無い。(参考

純粋な民生用の平和利用目的とするには、やはり無理があろう。

核爆弾というのは、理論的には20%HEUでも核爆発反応を引き起すことは可能なのだそうだが、通常は85%+くらいに濃縮したHEUを使用するといい、20%HEUを製造する濃縮技術があれば85%+HEUに再濃縮することに技術的な問題は無く、容易なのだという。

イランは核兵器の保有を目指しているか、或いはそのように見せかけてイスラエルや欧米による武力攻撃を誘引しているのか、或いは単に趣味でウラン濃縮をしている、と言うところになるだろうか。

核兵器というのは、1発で相手国の国家機能を壊滅させることを可能とする究極兵器であり、核兵器を保有してしまえば、世界はその現実を追認する以外なくなるだろうし、イランは核保有国として中東で突出した影響力を誇示出来ることになるだろう。
超大国パワーの象徴でもある核兵器は、”愛国者”達にとっては魅惑的なものなのだろう。

イランが主張する通りに純粋な平和利用目的であるのであれば、軍施設内に秘密施設など設けずに、疑惑を持たれる事なく世界にオープンな形で、IAEAへの報告もその義務を怠らずに、その査察にも誠実に応えればよさそうなものだが、そうゆう姿勢転換が容易に出来るようであれば、そもそも今日の状況まで問題は拗れては来ないわけか。

経済制裁もイランの主要取引先である中国などは同調しておらず、いわばバケツに穴が開いている話だろうし、国民の困窮や民意と言ったものに左程の配慮を必要としない体制の国家であろう。
経済制裁をしなければ、イランは堂々着々と核開発を進めるだけだろうから、イランの翻意を促す世界の意思を示すという意義はあるだろうが、経済制裁だけでイランの姿勢転換を促すことは難しそうである。

イランが核兵器保有に成功した場合、中東の周辺諸国も核保有に進む可能性は高いのだろう。
究極兵器である核を相互に保有することで、中東の紛争が反って終焉する可能性も無くは無いだろうが、中東地域で核兵器が使用され、或いは偶発事故の発生で、世界のエネルギー供給に支障を生じる可能性のほうが遥かに高いだろうか。
イランの核開発は、あらゆる手段でこれを阻止する、という選択肢しかないことになろうか。

特に自国の存在を否定する相手が核保有することになるイスラエルにとっては、国の存亡の問題であるから、看過することは出来ないであろう。

一定の時点で、イスラエルはイランの核施設を空爆などで破壊する行動に出ると思われるが、幸か不幸か、シリアは国内情勢が混沌としている。同国空軍は健在なのだろうが、その防空体制の隙をついて、或いは実力でこれを排除することは可能だろうし、隣のイラクは米軍撤退直後であり新生空軍のF-16戦闘機は年内は米本土で訓練中である。イラク上空は妨害されることなく使用が可能である。

ただ、イスラエルが使用出来るバンカーバスターは装備・機材の関係で貫通力の弱い小型の爆弾のみであるから、堅固な地下施設そのものを破壊することは困難であろう。
地上施設等は兎も角として、堅固な地下施設目標に対しては地下施設そのものでなく、坑道通路部などを対象にする以外ないだろうが、困難さを伴い確実な破壊は期し難いところがあるだろう。
中途半端な攻撃結果に終った場合には、反って間違ったメッセージをイランに与えかねまい。

イランの核開発施設を武力攻撃で破壊し、核開発の意思を断念させるには、集中した戦力投入で相応に大規模な被害を与える必要があることだろう。

これを実行するのは、その装備と機材を有する、米軍が行うのが望ましいこととなる。

国際紛争解決の外交というのも、力を行使されて相手の実力を知ってこそ、真摯な外交交渉が成り立つというのも又事実だろうか。

先日のWSJ紙に、米軍がイラン戦準備で対機雷戦能力や対高速艇対処能力の向上などを図っているとの記事があったが、記事中にイランの保有する機雷は、「露・中国製の2~3,000個」と従来思われていたが、最新情報では保有機雷は5,000個に増えているのだという。(
おそらくは中国製機雷などを国産化し、量産しているのであろう。

1991年の湾岸戦争で、フセイン・イラクはクエート沖に1,200個の機雷を敷設している。
これの掃海には、戦争終結後に派遣された日本の掃海艇を含めて、9カ国の掃海艇部隊40隻で、3ヶ月半を要したという。

現在米海軍には掃海艇というのは14隻があるのみである。(
英はじめNATOや湾岸諸国も参加するとはしても、イランが周辺海域で機雷戦を実施した場合には、相当困難な事態も考えられようか。

日本は武力による国際紛争解決を否定し、飽く迄も話し合いによる平和的解決を”国是”としているのであろうから、たしかにも少し積極的外交でその信念とするところを世界に示してもよさそうなものであるのだが。(イラン危機回避へ日本も役割を果たせー日経社説

参考:海自掃海隊群

◇◇◇引用;朝日新聞
「イラン、ウラン濃縮加速」 IAEA、核問題で報告書
2012年2月25日12時11分

国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)事務局長は24日、イラン核問題の報告書を理事国に配布し、イランが新たに本格稼働した地下のウラン濃縮施設で、核兵器開発に近づく濃縮度20%のウラン製造を加速させていると指摘した。また、先の高官級調査団の再三の要求に応じず、核関連施設への立ち入りなどを認めなかったイラン側の非協力的な対応も強く批判した。

 報告書を受け、米欧とイランとの緊張が高まり、再開を検討しているイラン核協議の行方に影響が出る可能性もある。イランの核開発を最大の脅威と見なすイスラエルによる軍事力行使の懸念も高まっている。

 報告書によると、イラン中部コム近郊のフォルドゥ地下に建設された施設に濃縮ウランを製造する遠心分離器約700基を設置。イラン側の説明では、濃縮度20%のウランがこれまでに約13.8キロ製造された。

http://www.asahi.com/international/update/0225/TKY201202250223.html
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