死者   1万5854
関連死    1407
行方不明   3155
負傷者  2万6992
避難者 34万3935

3月11日の日経ネットに出ていた東北震災1年後の状況だという。

1995年1月だったか、阪神淡路大震災の時の6千人を超える犠牲者数と云うのにも随分驚いた記憶があるが、死者2万というのはやはり近世では未曾有の大惨事と言うほかない。

宮城県の被害が甚大だったようだが、22歳の時まで暮らしていたところであり、天災とは言えニュースを目にする度に口惜しいような悲しいような気持ちが沸いてくる。
東日本大震災Wiki

現在の避難者というのは福島県が多いのだろうが、福島原発事故には唖然とさせられた。

炉心に装荷されていた核燃料集合体(計2,808体)も然る事ながら、原子炉建屋内の冷却プール及び別棟の冷却プールには新旧合計11,417体の核燃料集合体が保管されていたのだといい、これが冷却水を失い溶融して放射性物質を放出する事態にでもなっていたら、関東一円も危険区域となり首都東京も避難対象となるから、日本は”終っていた”ことだろう。

敷地内には他にも大中9基の「乾式貯蔵キャスク」(空気自然対流冷却だという)に計408体の核燃料集合体もあったというから、福島第一原発には核燃料集合体は、全合計14,633体在ったということになる。

よくもまあこれだけ貯め込んだものであるが、核燃料集合体の1本でも熱溶融して放射線を出す事態になれば周辺での作業は困難になるから、これが次々と連鎖して、遂には国家破滅的な事態になってしまう危険があるだろう。
一箇所に集積せず分散管理して、万一の場合の被害を局限する措置が必要だろうが、使用済み核燃料の最終処理施設も決まっておらず他に移す場所も無いのだろうし、大体原子炉自体を一箇所に何基も並べて建てている状態であり、今さらどうにもならないので、”万一の事態というのは「起らない。諸対策によって工学的には現実に起こることが考えられないほど発生の可能性は十分小さい」ことにして、考えない事にしていた”、というところだろうか。

”決して起こらない筈のこと”や”起きてはならないこと”が簡単コロリと起きてしまうのは、常日頃ニュースでよく見聞きするところである。
「考えられないことが起きる」というのが事故というものの本質なのであろう。

原子炉3基がメルトダウンを起こし原子炉建屋が次々と爆発する”想定外”の原子力非常事態が発生したわけだが、事故数日後には特に3号炉の燃料冷却プールの水位が低下し、核燃料集合体が露出して熱溶融が始まるという悪夢が、現実の事として懸念される事態となっている。

3月17日0948より陸自第一ヘリ団のCH-47、2機により水投下が先ず行われている。
前日に化学幹部を乗せたヘリが上空を飛んでおり、原子炉上空の放射線量を計測出来たので、実測データに基き上空飛行高度は300ft、各機2回の水投下飛行となったものであろう。

CH-47がスリングする水バケツ(野火消火器材1型)は容量7.5t(7,500L)というから、投下4回で計30tであり、それもやや面散布となるのでピンポイントで全量プールに命中するものではないから、容量1400tという3号炉の燃料冷却プール(東電事故報告書による)には、”旱に霧雨”と言ったところかも知れないが、「突撃路を開く尖兵」としての役割を陸自航空部隊が果たしたといえよう。
1番機に同乗し空中指揮を執った第1ヘリコプター団第104飛行隊長加藤憲司2佐の母校での講演

原子炉上空の放射線はかなり強く、乗員の鉛防護服着用は勿論、CH-47の床には放射線防護に鉛の板や開口部にはアクリル板も敷いていたというが、任務飛行後「乗員全員異常無し」であったという。
若しも乗員が急性放射線障害でバタバタと倒れるような結果でも生じていたら、以後の作戦と関係者の士気に大きく悪影響を生じたことであろう。

同日1930頃より地上進入した自衛隊消防車、警視庁機動隊放水車により30t放水。
翌18日1400頃よりも消防車による40tの放水が出来ている。
消防車の搭載水量には限度があるところだが、圧巻は18日深夜からの東京消防庁ハイパーレスキュー隊による屈折放水塔車を投入した海水の連続放水2,430tであろう。

屈折放水塔を伸ばして、原子炉建屋爆発で露出した核燃料冷却プールに上から直接投水が可能であり、それも毎分3tの水量を持続放水している。

さすがは東京消防庁であり、凄い器材を持っているものだが、派遣レスキュー隊が現場に進出してみたら、散乱する瓦礫でホース車両が海岸線に達っせない状況だったという。 これに使用する消防ホースは通常のものの倍ほどの太さで人力による展開はそもそも考えていない重さのものだというが、一束を4人で持てるよう現場で早速工夫して、ホースを人力展開させている。
作業に当たっては放射線計測員を配置同行させ、作業隊員は展開作業に全力集中出来るようにもしている。

”現場に進出したら想定外のことが!”と言うのはこの人達にとっては常に想定内であり、臨機応変、迅速確実、まったく見事なものであり、「鮮やか」と言うほかない。

作業を終えて帰庁報告する139名の派遣消防官に、石原慎太郎都知事が流れる涙を拭おうともせず、日本を救ってくれたと感謝の頭を垂れていたが、全く思いを同じにする。(YouTube

「自分が行きます」、事に臨んでは己の身の危険を顧みず、敢然と任務に邁進する、鍛えられた若い人達というのは社会の宝だろう。

ちなみにであるが、東京電力の事故調査報告書では、3号機SFPプールの水位について検証した結果として、仮にプールへの注水が行われなかったとしても、プール水位は半分以上残り十分な水位が保たれ燃料集合体が露出することは無かった、ものとしている。(P55
結果論ではあるが、3号機プールへの決死の注水作業は不要だったことになるだろうか。

管直人総理大臣は3月15日早朝、東京電力本社に自ら乗り込んで行き、”原発よりの撤退は有り得ない!”と本社役員やTV会議の福島第一原発幹部を”ウナリ飛ばした”のだと言うが、退却しようとする兵隊たちに対して一喝を入れ、理由の如何を問わず最前線に止め置く、下士官や上等兵としては、これほどの適任者もなかったことだろう。

日本の有事に直面して、全般指揮を執る最高指揮官や、司令部機能というものが、悲しいことには不在であった。

福島第一原発の非常用ジーゼル発電機というのは、地下に設置されていたといい、配電盤等の電気品についても地下に設置されており、防水型でもないので冠水の結果その機能を早々に喪失している。
停電で照明が消えたので諸々の応急作業が困難さを増したとか、リリース弁も電動であり手動開放手順は事故に直面してから手順を模索した等の記述を目にすると、東電や原子力関係機関の非常時対応の考え方には違和感を覚える。
原子炉の安全性というのもイイカゲンなものであったし、周辺住民の避難対策などの安全策も事実上何も考えられてこなかった事が露になっている。

介護を要する患者を多く抱えた福島原発周辺の病院の様子などは、悲惨の一語に尽きる。(双葉病院の真相ー河北新報

原子力発電というのは、極少量の核燃料の核反応でタービンを回せるので、発電の直接の原価というのは極めて安価である。 事故の場合の安全対策費用を考えなければ、これほど安価な発電方式も他にはあるまい。
原発周辺地域の事故対策・安全対策というのは国税投入なのであるから、原発を増やせば増やすだけ電力会社は儲かることになるが、電力会社は原価査定で電気料金を国から認可されるという特殊な会社なので、あまり利益を計上しても仕方無い構造の法人であるから、”自由に使える資金が増える”と言うべきか。

電力会社による政治家への直接の献金というのは規制されているようだが、パーティー券なり役員個人名義の献金なり、少し頭を使えば方法は幾らでもあるだろうし、そもそも原発建設となれば各種対策費として巨額の税金が動くので、政治家としての力量発揮の機会が得られよう。
主要な原子力科学者たちにも”研究費”の寄附が行き渡っていた。(原子力業界が安全委24人に寄付 計8500万円ー朝日新聞
東京電力の広告宣伝費というのは年間百億円単位のようであり、マスコミというのも皆頭が上がらない。(東電広告費 116億円 昨年度ー日本共産党赤旗

かくして利権の石垣を積み上げた巨大な”原子力城”が作られて来ていたのであるから、年貢を納める城下の民百姓の安全を第一に考える事を期待するほうが無理と言うものであったろう。

原子力安全委員会も保安院も、骨を抜かれた奇妙な軟体動物と化していたから、何か事が生じて一押しされれば、重大事故の奈落に落ちる下地は整っていたというべきか。
 
福島原発事故は起るべくして起きた原子力重大事故であったろうか。

原子力重大事故により放射能汚染が発生した場合、マクロ的には漏出した放射性物質の総量を見て事故のスケールを判断し、ミクロ的には只管計測して、個人防御なり除染なり逃げるなりすることになる。

事故により漏出した放射性物質の総量であるが、原子力安全委員会は63万テラベクレルと推定、保安院は37万テラベクレルと当初推定したが後に77万テラベクレルとしている。48万テラベクレルとの数字もあるようである(サンケイ)。
漏出した核種やその量により推算が違ってくるのだろうが、随分と開きがあるものである。 それにしても数十万テラベクレルのスケールで違うというのは、計算誤差というにはあまりに数字が大きいだろうか。

海洋に流出した分量についても色々な数値があるようだが、日本原子力開発機構の小林卓也研究副主幹らは1万5000テラベクレルとしている。
フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は、セシウム137だけで2万7000テラベクレルに上るとしている。(読売新聞)

主役の東京電力は、計測していたのであるから各種計測値を持っているだろうし、漏出放射性物質の総量についても当然計算している筈であり、運転当事者であるからかなり正確な数値を社内では把握している可能性が考えられるが、公表は未だしていないようである。数字は見当たらない。

1年過ぎても漏出総量すら確定していないようであるが、1万テラベクレルで人口1億として一人当たり1億ベクレルになる話であるから、いずれにしても莫大な量の放射性物質がそれも悪いことには大半は陸地に降り注いだということになる。

居住区域を除染しても、山野から又放射性物質が流入してくるおそれがあるだろうし、阿武隈川など東北の河川で子供達が遊ぶのは危険があるであろう。 福島県周辺ではこれからは身の回りを只管計測して注意して暮らす必要がある。

これだけ大きな放射能汚染が生じたのであり、自然界の生態系に影響が無いことは考え難く、これから東北の山野では動植物の異変が生じてくることと思われる。 山の動物たちは可哀想である。
人間にとっても全く影響が出ないと考えるのは些か難しいだろうか。
癌の発生による死者の増加を1,000人規模と推定する研究者もいるようである。(

安全なものであれば、大電力消費地である東京になるべく近い送電ロスの少ない東京湾岸にでも建てればよさそうなものだが、利権の甘味はあるが実は危険なモノなので、地方の寒村を原子力助成金で釣って原発は立てる。
そうこうして、狭い島国で人口密集、地震帯の上にあり世界でも災害の多い日本に、いつの間にやら50以上の原子炉が並んでいる。

万一の場合の対策費などを考慮すれば、原子力発電による電気料原価は火力発電に比べ決して安価なものではなかろうし、第一安全に運転できることを保障する、独立し相互に牽制する秘密を持たない公開されたシステムを期待することが、現状の政治や原子力業界の姿からは難しかろう。

既存の火力発電所の稼働率は半分以下だったようで、この夏のピークも原発が無くともギリギリ間に合いそうだが、必要な場合は冷房を止めねばならぬこともあるだろう。

”(電気が)欲しいから、(原発を)やるのだ”というのでは、高校生のコンビニでの万引きと変わるところは無い。

世界を見渡しても原発建設に傾注しているのは、何がどうであれエネルギーが必要だとする中国等の経済発展途上国であり、欧米諸国は原発には懐疑的である。
フランスのみが原発に力を入れているが、ドイツやイタリアは原発廃止である。
アメリカも原発を電力供給の主柱とはしていない。

津波や地震ばかりでなく、テロや工作員という想定外もあるだろう。 日本は火力発電の設備更新で供給量を少し増やせば十分やっていけるのであるから、何も原発という”地雷”を日本の全土に敷くことは要るまい。

夜も煌々と24時間明るく賑やかに、冷えた飲み物がいつでも自販機で買え、冷房のガンガン効いた部屋で快適に過ごすのも良いだろうが、四季折々の美しい豊かな国土の自然と、日本の心を子々孫々に伝えてゆくことはより大切であろう。

参考;
PBS VIDEO 「Inside Japan's Nuclear Meltdown」

ドイツZDF フクシマのうそ

Youtube ハイパーレスキュー隊が語る震災の現場(福島第一原発)

東京電力:福島原子力事故中間報告書

吉岡律夫:我々はどこで間違えたのか?

Youtube 衆院厚生労働委員会参考人;児玉龍彦教授 H23 7.27

新相馬節(Youtube)


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WSJ紙より。