北朝鮮の大型弾道ミサイルKN-08用の自走発射車両TELが中国から北朝鮮に輸出されていた問題だが、日本政府は昨年10月に、入港船舶の積荷記録により、その事実を把握していたのだという。

日本政府は直接中国に事実関係を質すことはせずに、米国に情報提供の”御注進”を申し上げたというのが面白い。

日中両国間には”立派な”外交関係があるのだし、東アジア地域の安全・安定というのは共通の関心事であろうし、北朝鮮のミサイル開発阻止については、その国連決議に中国も同意していることである。

WS51200のような特殊車両を北朝鮮が民生用として必要とする要素は薄く、ほぼ軍用であることは明確だし、それもミサイル運搬車両であるから、日本は中国に懸念を質すべきことであったろう。

先日も丹羽宇一郎中国大使が、英紙ファイナンシャル・タイムスのインタビューで、「石原東京都知事の進める都の尖閣諸島購入は、今まで築き上げてきた日中友好関係を台無しにするものであり、両国の関係に破局的な結果を招くものである。」との発言()がニュースを賑わせていたようだが、”中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、今後の大きなマーケットである。 たかが島ひとつのために、些かでも中国の御機嫌を損ねるような真似をして、経済的に得なことは何も無い。 海洋海底資源を取られるといったところで、中国が資源を活用してマーケットが拡大し、そこに日本が入っていけば良いではないか、何が問題なのか。”、という考えもあるだろうか。

丹羽大使は発言で更迭等の処分も受けなかったようであり、本人の訂正発言も無いようであるから、一国を代表する大使であり、外交記録には残らない形で、日本政府が中国側に伝えたかった”中国様の御機嫌取り”のメッセージだったことになるだろう。

ミサイル自走発射車両輸出の問題も、日本が中国にそんな事を質したところで、「否定され一喝されてお終い」だろうし、日本だけが突出してそんなことをし、下手に中国の御機嫌を損ねて、何か仕返しでもされては大変だから、面倒な問題には日本は首を突っ込まずに、他の国に任せておくのがいい。

そんな外交姿勢が見えるようである。

”うわべだけの仲良し”という姑息な外交は、上下隷属の関係は作れても対等の正常な国際関係は作れないから、その行き着く先は、それこそ破局的な結果を招くことになるだろうか。

日本政府の尖閣諸島問題の対応などは、そのコースをまっすぐに進んで来ているように見えるのは気のせいか。

絶対平和主義の国家であるから、特に相手国が強い場合には絶対に軋轢を生じさせない、一定の理解と配慮を相手に示してやる”巧みな外交”、というのが、頭の良い模範解答になるだろうか。

米国と中国という2頭の荒馬に、巧みに跨って上手く進んで行こう、というのは良いかも知れないが、只この2頭の馬は夫々進む方向が違うので、振り落とされて、挙句に両馬に踏んだり蹴ったりされるようにならねば良いのだが・・・


◇◇◇引用;読売新聞ネット

中国、ミサイル用特殊車両を北朝鮮に輸出

中国が昨年8月、長距離弾道ミサイルの運搬・発射に利用できる特殊車両を北朝鮮に輸出していたことが分かった。複数の日本政府関係者が13日、明らかにした。

 北朝鮮が今年4月の軍事パレードで公開した「新型ミサイル」を運搬していた車両とみられる。政府は、北朝鮮への大量破壊兵器関連物資の輸出を禁じた国連安全保障理事会決議に違反する可能性があるとみている。

  政府関係者によると、海上保安庁が昨年10月、大阪港でカンボジア船籍の貨物船を立ち入り検査した際、特殊車両の輸出の事実を記した「目録」を発見した。同船は、中国南部で特殊車両を積み込み、北朝鮮の南浦ナムポで降ろしていた。

 政府は米政府に情報を提供し、米政府が中国政府に事実関係を問い合わせた。中国政府は「木材を運搬するための車両だ」と説明したという。

(2012年6月13日14時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120613-OYT1T00520.htm
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