今年は、「カサブランカ」という映画が公開されてから、丁度70年になるのだという。

1942年のサンクスギビング・ディ(感謝祭)の祝日に、ニューヨークの映画館で初上映されたというから、日本では昭和17年であり、戦争の真っ最中で、太平洋戦攻防の潮目となったガダルカナル島での飛行場奪還を賭けた3度目の、そして最後の攻勢となった、仙台第二師団による10月攻勢が頓挫・失敗に帰した直後の時期になるだろうか。

旺盛なる攻撃精神を振起し、多少の犠牲を厭わず果敢に吶喊さえすれば、必ずや血路は開かれ、戦勝を得ることが出来る、との日本軍歩兵の神髄も、”嘗て経験せざりき”濃密な米軍の近代戦火力集中の前には、只徒に兵の屍の山を築くだけであったから、「今度の戦はどうも様子が違う」との認識は第一線指揮官には出ていたろうが、全般的にはまだまだ緒戦の勝ち戦の機運が残っていたろうし、米軍にしても対日反攻作戦を開始したばかりであるから、戦争の帰趨は誰にも楽観出来る状況ではなかったろう。

この映画の舞台となっているのは、アフリカの仏領モロッコのカサブランカという町だそうだが、当時フランス本国はナチス・ドイツの電撃侵攻作戦の前に敢え無く降伏して占領下にあり、占領下のフランスには親ナチスの傀儡政権が出来ていた。
”生きるため”には、支配者であるナチス・ドイツに恭順・協力の姿勢であることも、仕方の無い選択であったろうか。

一方ドゴールは英国に逃れて自由フランス軍を組織し、ドイツ占領下のフランス国内にはレジスタンスの抵抗組織が対独工作活動をしているという、複雑な情勢であった。

1940年6月のパリス。 フランス人にとっては、屈辱的な写真であろう。
HitlerinParisJune1940 (472x640)
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「カサブランカ」にはナチス・ドイツの占領から逃れて来た欧州の色々な国の人間が、さらに米国目指して逃れてゆく様子が描かれているが、主人公のリックとイルザも、ナチスに占領されるパリから別れ別れに逃れて来、ここで再会したという設定である。

男女の恋愛の心の機微などは、飲兵衛のおっさんには縁も理解も遠いところだが、それにしても、イングリット・バーグマンという女優は知的で綺麗なものである。
物事に例外はあるにしても、若い女性は皆綺麗なものだが、やはり「スター」と言われるだけあって、彼女は光り輝いている。

スウェーデンの出身だというが、俺も宮城県の百姓の倅なんぞに生まれ落ちずに、北欧美女の都スウェーデンに生まれてみたかったが、人間なかには北朝鮮の貧村に生れ落ちて、そこで一生を終えるのもいるわけだから、まあ、あまり文句は言えないだろうか。




リックのバーで、ナチス独逸の将校たちが「ラインの守り」?とか言う軍歌を歌って騒いでいるのに対抗して、フランス国歌をイルザの夫(チェコのレジスタンス闘士という設定)が演奏させ、皆が歌い出し、これを圧倒沈黙させるというシーン。 飲兵衛のおっさんとしては、最も感動したシーンであった。

ラ・マルセイエーズというフランス国歌は、「立ち上がれ、闘え」という勇ましい歌詞なのだという。
この映画が上映された11月の末に、米軍は北アフリカへの反攻上陸作戦を開始しており、程なくしてカサブランカもナチス・ドイツの支配より開放されている。