北朝鮮が再度”衛星の打ち上げ”に挑戦するという。

北朝鮮の通知では、12月10日から22日の間で、0700から1200時までに打ち上げるのだという。
ちなみに、金正日の命日は17日である。

去る4月13日の打ち上げでは、発射直後から異常を生じ爆発を起こして終っている。

ロケットの1段目、2段目の落下予想海域は前回とほぼ同様であるから、同じロケット(銀河3号)であり、前回発生した不具合箇所の改修を施したものであろう。
前回と違い、今回は衛星フェアリングの落下予想海域(済州島沖)も指定しているのが興味深い。

衛星を打ち上げるには、地球の自転速度を利用出来る東方向に打ち上げるのが有利なわけだが、それだと日本列島上空を飛翔することになってしまい、さすがの北朝鮮でもそれは考えたものであろう。(1998年8月31日の銀河1号ーテポドン1号ー発射は津軽海峡上空を飛翔、2009年4月5日の銀河2号ーテポドン2号ーは東北地方上空を飛翔し、日本に弾道ミサイル防衛システムを導入・拡充させるきっかけを与えている)
東岸の舞水端里でなく北朝鮮西岸の新しい発射施設東倉里から南方向に発射するのだが、沖縄県の南西諸島がそこには在るわけで、石垣島、西表島の上空辺りを飛翔してゆくことになると思われる。

計画軌道通りであった場合は、南西諸島上空では高度数百キロの宇宙空間を飛翔する筈で、危険は無い筈であるのだが、計画通りに飛翔するという保障は無く、北朝鮮のエンジニアの技術力、部品や材料の品質管理などの総合的な工業レベルからすれば、想定外の不具合発生の確率は高いと言わざるを得まい。

通常、打ち上げ後に不具合発生の所謂”打ち上げ失敗”の場合には、指令破壊や自爆装置により地上に被害を与えない空域でロケットを破壊してしまうわけだが、4月13日の銀河3号の失敗の時は米国筋などの情報では打ち上げ直後に異常は発生していたというが、ロケットは450kmほど飛翔して黄海に落下したといい、北朝鮮の同種ロケットの自己破壊機能については全く不明である。

打ち上げる衛星は”地球観測衛星”だそうだが、地球を周回する衛星のモニタリングは通常世界規模で配置するわけだが、そんな手配を北朝鮮が展開している様子も聞かない。

北朝鮮の言う”実用衛星”は兎も角として、今回このロケットの飛翔が成功すれば、米西海岸に数百キロ程度の弾頭を投射しうる”無慈悲な攻撃”の能力を有するとのデモンストレーションにはなるのであろう。

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落下海域ー産経新聞ネットー
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「衛星」カバー落下海域
2012.12.3 20:07 [核・ミサイル事情]
 韓国国土海洋省が3日発表した北朝鮮が関係国に伝えた「衛星」カバーなどの落下予定海域は次の通り。

 【1段目落下海域】北緯35度44分6秒、東経124度30分30秒▽北緯35度44分7秒、東経124度54分23秒▽北緯34度58分36秒、東経124度32分32秒▽北緯34度58分43秒、東経124度56分11秒

 【2段目落下海域】北緯18度13分44秒、東経123度48分37秒▽北緯18度12分54秒、東経124度45分20秒▽北緯15度31分7秒、東経123度46分24秒▽北緯15度30分17秒、東経124度42分19秒

 【「衛星」カバー】北緯33度40分6秒、東経124度7分47秒▽北緯33度39分51秒、東経125度12分29秒▽北緯32度24分22秒、東経124度7分50秒▽北緯32度24分7秒、東経125度11分37秒(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121203/kor12120320080007-n1.htm
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長距離弾道ミサイルの開発に直結するロケット発射が又行なわれれば、あからさまな国連決議違反の行為であり、日米韓などは北朝鮮への厳しい対応を協議しているというが、国際経済制裁等は既に行なわれており、武力を使うわけにもいかないだろうし、新たに有効な制裁手段というのはなかなか難しいだろうか。

北朝鮮の唯一の友好国である中国は、北朝鮮へ警告していると言うのだが、国際社会の冷静な対応を呼びかけてもいる。
経済制裁などを中国に仄めかされれば、北朝鮮は発射なぞ中止せざるを得ないと思われるが、中朝貿易は国際経済制裁を補填するかたちで拡大の一途であり、中国に対北朝鮮経済制裁実施の意思は窺えない。

弾道ミサイルの搭載車両を北朝鮮に輸出していた事件(”木材運搬用”との中国の説明であるが、オーダーメイドになる極めて特殊な自走式発射台車両であり、発射台部分の最終艤装が北朝鮮で行なわれていたとしても、中国がその用途を知らなかったとは極めて考え難い)は未だ記憶に新しいところだが、その行動からは北朝鮮のミサイル開発を、中国は寧ろ助長していよう。
中国は、北朝鮮の弾道ミサイル開発が進むほうが寧ろ国益に適っていると考えていることになる。

久保田氏の予想する弾道では南西諸島上空飛翔時には高度数百Kmに達しているはずである。
銀河3号と同程度の100tクラスの衛星ロケットの飛翔パターンよりもそれは窺える。
飽く迄、予定通りで飛翔出来た場合であるのだが・・・
http://homepage3.nifty.com/kubota01/N_Krea_Ballistic-Missiles/N_Korea_Ballistic-Missile_02.html

「北朝鮮衛星打上情報について」国交省ノータム情報