1月14日に、成田空港で出発準備中だった日本航空の787のバッテリーにトラブルが発生したという。

787のバッテリーはLVP65という型式のリチウム・イオン電池セルを8個直列に繋いだもの(LVP65-8-402)である。

メイン・バッテリーの8個のセルのうちの1セルから何らかの原因で熱が発生し、セル側面に設けてある安全弁(Rapture Plate or nickel vent disc-20 mm in diameter, minimum burst pressure 0.6 MPa)が開いて電解液がバッテリーケース内に漏れ、気化したことでバッテリーケースを収納しているステンレス製の密閉式格納容器内の気圧が上がり、差圧が規定値(およそ15~18psi)に達したところでチタン製ベント菅へのバースト・ディスクが開口し、「白煙」がベント菅から機外へ放出された。ということのようだ。

丁度1年前の2013年1月に、ボストン空港でJAL787のバッテリーが発火したり、高松にANA機が緊急着陸していたわけだが、ボーイングによるバッテリーの改修対策を終了してANA、JAL共に2013年6月から商業運航を再開していたところである。

インシデントの発生直後であり、詳細情報が不明であるが、状況は昨年の同バッテリー・トラブルに類似しているようだ。

昨年の時点でも過充電や過放電のようなことは痕跡がなかったとされ、外部からバッテリーになにかの強い電流が流れたというようなことも無かったとされている。
改修対策により充電や放電時の規定値は当初より緩やかにされ、安全マージンを上げている。
バッテリーシステムの検査も頻度を上げて行われており、今回も過充電や過放電、外部からの力という要因は、考え難いようである。

通常の使用状況環境において、LVP65セルの内部から何らかの原因で発熱する場合があることが考えられようか。

しかも現在の検査方法ではその予兆は把握出来ず、健全なセル状態のものが突然発熱を起こすということになる。

ボストンでのJAL787のバッテリー火災についてはNTSBが現在原因調査中であり、1月8日の声明ではこの3月で調査作業は終了し、その後解析および報告書を纏め、今秋には最終報告が出来るとのことである。
今回の成田でのJAL機バッテリー・トラブルにもNTSBはJCABに協力するとのことで、調査官(Mike Bauer)を日本に派遣するという。

調査の結果、”原因は全く解りませんでした”ということも有得るが、専門家の集まりであるNTSBであるから、明確な指針を示してくれるだろうから、NTSBの最終報告待ちというところか。
秋までだと、その間にバッテリートラブルが再発しそうであり、NTSBは少し前倒しで発表してくれると良いのだが。

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LVP65セルー図は運輸安全委員会調査状況報告より。
現在のところ3件共発生は1月である。件数が少ないので統計的に何かを判断することは困難だが、気温や湿度などが影響してるのだろうか?
設計構造上不時発熱を完全に防止することは困難である、などということも有得るわけだが、そうなると大変だろうか。

想定しうるあらゆる要因を考えて対策を施し、更に万一非常事態が発生しても被害を局限化する構造として、安全を確保する。と言うのは開発設計段階での思想である。
事故というのは、考えられない想定外のことが生じるので”事故”となる。
人間は神様ではないので、全てを見通すことは困難であり、特に新しい技術分野のものについては”サプライ~ズ!”が有得るものと考えねばなるまい。
ボーイングの行った包括的改修対策というのは、開発設計段階のアプローチの延長線上のものであり、事後の”トラブルシュート”というのは、トラブルの原因を突き詰めて解明し、それを潰す、といのがやはり正道なのであろう。


参考;

Boeing 787 Battery Fire」-NTSB

ボーイング式787-8型JA804A航空重大インシデント調査状況報告」ー平成25年3月27日運輸安全委員会

航空機用大型リチウムイオン電池の開発」ーGSユアサ

ボーイング787型機の運航状況について」-JAL

ボーイング787型機ANAからのお知らせ」ーANA