昨年の11月23日に、中国が突如として東支那海上空に「防空識別圏」の設定を発表し、この空域を飛行する航空機は中国当局に飛行計画を通知し、飛行に当っては中国当局の指示に従わねばならないものとし、非協力あるいは中国の指示に従わないものに対しては”防御的非常措置”をとるとして(China's armed forces will adopt defensive emergency measures to respond to aircraft that do not cooperate in the identification or refuse to follow the instructions)、緊張が高まっていた。

公海上の国際空域の飛行自由の原則を履行し、中国の通告を無視して、引き続き東支那海上空でパトロールや訓練飛行をする米軍機や自衛隊機に対して、その後も特段の変わった動きは報じられていなかったが、5月24日に海上自衛隊のOP-3および航空自衛隊のYS-11EBに対して、人民解放軍のSu-27が異常接近してきたという。

東支那海では中露海軍艦艇が演習中であったが、自衛隊機は演習エリアに侵入したものではないという。

人民解放軍のSu-27は当該自衛隊機の後方より近接運動を行い、自衛隊機の50mおよび30mほどの至近距離に接近したという。

国際周波数で通信が可能な筈だが、中国側からは警告等の通信は無かったという。
もっとも、公海上の国際空域であり、演習中の中露艦艇に危険を及ぼすような飛行でもない以上、警告のしようもなかったであろうか。

訓練を積み相互に意思疎通のある軍用機同士であれば数十mの間隔など問題ではないだろうが、意思疎通の無い外国機間で、相手がどのような動きをするか不明なところに、高速で至近距離に近接飛行するのは事故発生の危険があるし、低速の大型機に戦闘機の苦手な低速域で雁行するのも又危険が大きい。

中国軍の戦闘機パイロットの年間飛行時間は150時間と推定されており、欧米空軍のそれと比べて低く、パイロットの平均的技量は当然高くはない。

「中国は危険な行為は慎むべきだ」などと言っても、中国としては相手に危険であることを認識させて、当該空域での飛行を自粛させるのが目的でやっているのだろうから、そう止みそうには無い。

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Photo:防衛省「中国軍機による自衛隊機への接近について

今回の事案から推定されること。

@Su-27は、中露海軍の当該海域での演習に伴い出てきたものであり、設定したADIZ全域にわたる24時間の管制体制はまだ出来ていないのであろう。

@Su-27パクリのJ-11があるわけだが、最も緊張度が高く戦闘に入る可能性が高いこの地域に配備しているのは、国産のJ-11でなくSu-27である。
カタログ性能ではJ-11が高いのだが、実際の戦闘能力ではSu-27に国産J-11は未だ及ばないのであろう。

尖閣諸島などは、”自国領”としており”中国の領空”だと設定しているから、今後尖閣上空を飛行するような日本の航空機に対しては、武器の使用にまで至ってくる可能性が高い。

日本の新聞社説など眺めると、”不測の事態を防ぐ交渉いそげ”というのが多いようだが、「不測の事態を防ぐ」ことに主軸を置く交渉となれば、何らかの妥協後退を余儀なくされ、所謂相手の思う壺にはまってしまいそうである。
それで一時は沈静しても問題の根幹が解決するわけではないから、将来不利な状況の下で問題は再燃することになる。

寧ろ、日本領である尖閣上空をはじめ、東支那海公海上での哨戒飛行などを強化し、若し万一にでも当方の航空機に対して武器を使用して危害を加えてくることがあれば、即座に自衛権を発動し”犯人”のSu-27を撃墜する態勢を示すことで、「挑発行為がソロバンに合わない」ことを中国に認識させるほうが、”双方同じ土俵で、不測の衝突防止の交渉”となり交渉が成功する可能性が高くなるのであろう。

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尖閣上空のP-3C
かなり標高もあるようであり、中国にしてみれば、可及的速やかに釣魚群島を小日本の略奪から”奪還”し、レーダーサイトでも設置したいところだろうか。

民間機の場合には、FAAでは異常接近いわゆるニヤミスについては、500ft以下の接近の場合レポートすることとされている。
自由飛行の原則の国際空域においても相手航空機に対して危険を与えない飛行が、全てのパイロットには当然要求されるのだが。

7-6-3. Near Midair Collision Reporting