「All Quiet on the Western Front - 西部戦線異常なし」は、第一次大戦を舞台とした小説・映画であるが、ウクライナ東部戦線はなかなか異常なしとはいかないようだ。

ウクライナ東部では最近ウクライナ軍が攻勢を強めていて、親露分離派勢力はその支配地域を縮小せられていたというが、ここに来て東南部の海岸地域で、火力機甲戦力に優れた有力な部隊が攻勢をかけて来、「Novoazovsk」という町が水曜夜半には占領されたという。

この辺りにはそのような強力な親露派勢力は存在しておらず、国境を越えて侵攻して来た、戦車や装甲車、自走砲を伴うロシア軍部隊による攻撃だという。

東部戦線でもロシア軍がウクライナ国内に侵攻布陣し、ウクライナ軍への砲撃等直接の攻撃を行っていると言う。

これまでもウクライナ東部の親露分離派勢力への武器供与をはじめ、ロシア領内からの攻撃等、”軍事顧問”としてのロシアの隠然たる関与は知れていたことであったが、ここへ来て白昼公然と部隊規模で参戦してきているようである。

ウクライナ東部では親露派勢力が、”ドネツク人民共和国”の設立を宣言する等していたが、”首都”のドネツクがウクライナ軍に包囲されるなど、芳しからぬ状況から、”せっかく蒔いた種の芽を、摘み取られてたまるか!”というプーチンの決意の顕われの行動なのであろう。

電撃総力戦でウクライナ全土を掌握するようなことは今は無理としても、ウクライナ東部を掌握し、クリミア半島への陸路も確保しておきたい、というところだろうか。

隣国の主権を蹂躙するあからさまな武力侵攻であり、ロシアの意図を断念させるには、経済制裁だけでは無理で、ウクライナへの強力な武器供与支援の開始などが考えられるが、オバマには出来まい。

 国防予算削減で、空軍のA-10攻撃機全機を用途廃止にするのだとの話があるが、要員の教育、弾薬類、今後10年間の運用経費も含めて、A-10を330機、まるごとウクライナに供与でもすればよいものを。

気の毒な話だが、ウクライナの将来はあまり明るくはないような・・・

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ウクライナ政府による戦況図。(Ukraine National Security & Defense

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ウクライナ領内をゆくロシア軍砲兵部隊自走砲車列。(NATO
ロシアはウクライナ領内の自軍の存在を完全否定しているので、正確には、「ウクライナ領内の国籍不明のロシア軍部隊」である。

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ウクライナ領内でのロシア軍砲兵部隊の布陣。(NATO)

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”ドネツク人民共和国”の初代首相と2代目。(注:テキヤのおやぢではない)
どちらの人物も経歴は判然としない。ちなみに初代はロシア人だという。

欧米とロシアは冷戦の時代に進みそうである。

日本にとってロシアと、そして中国は隣の大国。 ”敵の敵は味方”の論理で、ロシアと中国は今後友好関係を深めることだろうが、”弱肉強食、力が正義”のロシアのやり方が成功し世界に通用してゆけば、中国の東支那海などでの対日政策をも、勢い付かせることであろうか。