一昨日だったか、もう今年の夏も終わりだなと思い、冷蔵庫の奥に見つけた缶ビールを「さらば今年の夏よ!」と飲んでいたのだが、今宵はなにやらもう肌寒さを感じるようだ。
北緯47°、さすが此処は北国である。

マレーシア航空のMH17便だが、オランダの事故調査委員会が9日に「Preliminary Report (中間報告)」を公表している。

Preliminary report - Crash involving Malaysia Airlines Boeing 777-200 flight MH17」 - Dutch Safety Board

MH17便の墜落したウクライナ東部は武装勢力の支配地域であり、墜落現場に入ること自体なかなか難しく、未だに遺体の収容すら完全には終っていないといわれる。

本来であれば当件の事故調査はウクライナが主管するところであるが、今回はMH17便の出発地であり且犠牲者を最も多く出しているオランダの運輸安全委員会(DSB)に事故調査が委託されている。

オランダDSB主導の下、マレーシア、ウクライナ、ロシア、英国、米国、豪州などが調査に協力する形となっている。
墜落現場の事情からして、客観性などからも、妥当な調査態勢であろう。

出発地スキポール空港での当該機の整備記録ではNo1エンジン(L/H)のオイルを追加したのみで、機体や機体各システムに異常は認められていない。エンジン・オイルの消費も規定値内のものであった。
給油もされて同機は7月17日10:31(UTC時間)完璧な状態でクアラルンプールへ向け出発している。

運航乗務員は長距離路線ゆえ交替要員を含め2組(2名+2名)乗務していた。いずれの乗務員の運航資格、健康記録ともに問題は認められない。

CVR(コックピット音声記録)、FDR(飛行データ記録)も解析の結果、コックピットでの異常を知らせる警報音や乗務員の異常な会話などは無く、FDRもエンジンはじめ機体システムに異常は認められていない。
CVR、FDRともに事故日(7月17日)の13:20:03(UTC時間)に記録停止している。

機体は順調に飛行中に、突如として破壊が生じていたことになる。

機体の破壊は、機体外部よりの、高い衝撃力を持った多数の物体の貫通により、機体構造が破壊され空中で分解しながら落下したものと推定している。

機体の墜落域は、約10kmX5kmの広い地域に散らばっている。

中間報告書は、MH17便が地対空ミサイルなどの大型弾頭により破壊されたことを強く示唆しており、これまで言われてきたことと一貫性がみられよう。

ロシアだけは別の見方をしており、ウクライナ軍のSu-25攻撃機がMH17便と同じ高度におり当該機を追尾(攻撃)していたとしているわけだが、中間報告書はMH17便の周囲に飛行中であった他の民間航空定期便機については記述があるが、「Su-25」機については一切記述は見られない。
Su-25機がエアライナー機と同高度域をもし飛行していたのであれば、衝突の危険があり、航空管制から周辺エアライナー機に注意警報が出されて良さそうだが、ATC記録にもそのようなことは見当たらない。

当日の気象は曇りで、所々雷雲の発生がみられる気象であった。

MH17便は13:00時航路上の雷雲を避けるためダイバートをATCリクエストし、航空路L980より20NM(37km程か)左にダイバートしている。
13:19:53時のレーダー情報ではL980センターラインより3.6NM(7km弱)北にあった。
このような当該機の運動を眺めていた地上の地対空ミサイル射撃員が、”こいつは軍用機”と誤判断し、高度の判定なども誤って、「誤射」に至った可能性は考えられるところだろうか。

事故調査委員会の調査目的は、事故原因を究明して事故再発防止策を考え、航空の安全運航の向上に資する事にあるわけで、原因の究明はするわけだが、「誰が殺ったのか?」の犯人の究明というのは、国際司法機関によることになる。

今後は墜落現場に入れるだろうし、冬が来て一面の銀世界になってしまう前に、草の根を掻き分けて丹念に探せばミサイル関連の部品などが発見出来る可能性があるし、そうなればミサイルの種別を判定することも可能であろう。

ジャーナリストのBukミサイル目撃談や、地域住民のBukミサイル・ランチャーとロシア訛りの乗員の目撃談というのもあるし、丹念にひとつひとつ検証してゆけば、何処で何が行われていたかを明らかにすることも不可能ではあるまい。

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MH17便墜落地帯。DSBレポートより。 コックピットなど機首部分がかなり離れて落下しているので、機首部位が最初に分解分離していたものと思われる。