787バッテリー問題の件で、日本の運輸安全委員会よりFAA宛の勧告書が出されている。

以前NTSBよりも当該LIB導入時の試験や認定方法についての問題点・改善点の指摘がなされていた(Safety Recommendation)。

◇◇◇
Therefore, the National Transportation Safety Board makes the following
recommendations to the Federal Aviation Administration:

Develop abuse tests that subject a single cell within a permanently installed,
rechargeable lithium-ion battery to thermal runaway and demonstrate that the
battery installation mitigates all hazardous effects of propagation to other cells
and the release of electrolyte, fire, or explosive debris outside the battery case.
The tests should replicate the battery installation on the aircraft and be conducted
under conditions that produce the most severe outcome. (A-14-032)

After Safety Recommendation A-14-032 has been completed, require aircraft
manufacturers to perform the tests and demonstrate acceptable performance as
part of the certification of any new aircraft design that incorporates a permanently
installed, rechargeable lithium-ion battery. (A-14-033)

Work with lithium-ion battery technology experts from government and test
standards organizations, including US national laboratories, to develop guidance
on acceptable methods to induce thermal runaway that most reliably simulate cell
internal short-circuiting hazards at the cell, battery, and aircraft levels. (A-14-034)

Review the methods of compliance used to certify permanently installed,
rechargeable lithium-ion batteries on in-service aircraft and require additional
testing, if needed, to ensure that the battery design and installation adequately
protects against all adverse effects of a cell thermal runaway.
(A-14-035)

Develop a policy to establish, when practicable, a panel of independent technical
experts to advise on methods of compliance and best practices for certifying the
safety of new technology to be used on new or existing aircraft. The panel should
be established as early as possible in the certification program to ensure that the
most current research and information related to the technology could be
incorporated during the program. (A-14-036)


◇◇◇同上NTSB Safety Recommendation May 22, 2014より。

LIBは、今までに航空用としては存在しなかった全く新しい方式の蓄電池なので、機体メーカーのボーイングやFAAにも専門家というのはなかなか居ないだろうし、ここは外部の専門家や研究機関を大いに活用して、環境試験や認定方法について万全を期すべきだったということだろうが、少々”ユルかった”ろうか。

当該LIBメーカーであるGSユアサがLIBには最も詳しいわけだろうが、航空機用の開発は初めてであり、マーケットとしてはマイナーな航空用では投入できるリソースにも限界があるだろうか。 航空機塔載やその使用環境について精通することは難しかったろうか。

バッテリー内部短絡発生の原因について運輸安全委員会の勧告書では、「地上係留中の低温環境でのリチウム金属の析出」、「原因への関与が疑われる製造工程に起因する事象」、「バッテリーの充電制御に関して、設計時に想定されていないBCUの動作及びコンタクターの動作」、などの可能性を列挙しているが、問題発生の原因を明確にすることは出来なかったものとしている。

試験環境で、アースが関係しているとかもなかなか興味深いだろうか。

この高松空港のANA機も、ボストンのJAL機の場合も、短絡発生はどちらも6番セルからというのも興味深いところだろうか。

NTSBの報告書も近々公表されるはずである。

◇◇◇
米国連邦航空局に対する安全勧告
(2014.9.25 安全勧告)
(JA804A 高松空港 2013.1.16 発生 航空重大インシデント)

1.米国連邦航空局が講ずるべき措置
本重大インシデント調査において実施した内部短絡(釘刺し)試験では、バッテ
リーを機体に搭載した状態を模擬し、バッテリーボックスにアース線を接続し
た試験で熱暴走が発生したが、アース線を接続しなかった試験では熱暴走が発
生しなかった。
この試験結果並びにその他の試験結果及び解析から、本重大インシデントに
おいてメインバッテリーが熱暴走を起こしたのは、6番セルが熱伝播の起点と
なり、6番セルとブレースバーが接触してアース線を介して接地短絡したこと
によりバッテリーボックス内に大電流が流れてアーク放電が発生したことが熱
伝播を助長して熱暴走に至り、バッテリーの損傷を拡大させたものと推定され
る。
開発時に行われたエンジニアリング試験では熱伝播が発生しなかったが、こ
れはバッテリーボックスにアース線が接続されていなかったためと推定され
る。このことから、機体搭載時の状態を模擬していない試験を根拠に、安全性
の評価に内部短絡試験を含めなかったことは、適切ではなかったものと推定さ
れる。
航空機搭載用LIBに適用される現行の基準においては、試験の環境条件と
して、温度、湿度、加速度等の要件はあるものの、周囲の航空機システムとの
インターフェイスに関わる電気的環境については必ずしも十分には規定されて
いないおそれがある。なお、当委員会に提出された安全性解析書のFTAにお
いては、熱伝播のリスクは評価されていない。
また、型式証明においては、ベントを伴うLIBの発熱現象の発生確率は1
0-7/hr(1,000万飛行時間に1回)未満であるものと想定されていたが、
現実には、787の累計飛行時間が約25万時間の時点で、発熱現象が3回発
生しており、結果的に、その想定を大きく上回る発生率となっている。型式証
明におけるLIBの故障率の想定は、類似型式LIBの実績から算出されたも
のであるが、その算出手法は適切ではなかった可能性が考えられる。
さらに、セルのベントが発生した場合には設計時に想定されていなかったコ
ンタクターの開放が発生するものと推定され、全電源喪失時のリスクを再評価
する必要性を検討すべきである。
運輸安全委員会は、上記のような本重大インシデント調査の結果を踏まえ、
米国連邦航空局が、次の措置を講ずるよう勧告する。
(1) 航空機装備品の試験が実運用を適切に模擬した環境で行われるよう航
空機製造者及び装備品製造者を指導すること。
(2) LIB試験において電気的環境が適切に模擬されるように、技術基準
を見直し、必要があれば技術基準の改正を行うこと。
(3) 同型式機のTC時のLIBの故障率の想定について見直しを行い、そ
の結果を踏まえ、必要があればLIBの安全性評価の見直しを行うこと。
(4) 同型式機のTCにおいて、セル間の熱伝播リスクが適切に評価されて
いるか見直しを行うこと。
(5) 同型式機のセルがベントした後に発生するコンタクターの動作が、運
航に与える影響を検討し、その結果を踏まえ、必要な措置を講じること。
2.同機の設計・製造者であるボーイング社に対して指導すべき措置
本調査においては、内部短絡の発生機序を最終的に特定することはできなか
ったが、これまでに発生した類似事案に本重大インシデントを加えた類似3事
案全てが1月の寒冷期に発生していること、及び低温環境はリチウム金属の析
出を助長すると言われていることから、地上係留中の低温環境が内部短絡に関
与した可能性が考えられる。また、本重大インシデントの原因への関与が疑わ
れる製造工程に起因する事象が報告されている。さらに、本重大インシデント
の調査において、バッテリーの充電制御に関して、設計時に想定されていない
BCUの動作及びコンタクターの動作確認が確認された。
これらを踏まえ、米国連邦航空局はボーイング社に対し、以下の措置を講じ
るよう指導すること。
(1) エレメントの不均一な成形及び他の製造工程に起因する事象との関連
の可能性も踏まえ、内部短絡の発生機序について更に調査を継続するこ
と。また、その結果を踏まえ、さらなるLIBの品質と信頼性の向上を
図るとともに、温度等のLIBの運用条件についても見直しを行うこと。
(2) 設計時には想定されていないBCUの動作及びコンタクターの動作確
認について改善を図ること。


http://www.mlit.go.jp/jtsb/airkankoku/anzenkankoku10_140925.pdf
◇◇◇

87417857.jpg

レイアウト図はNTSBヒヤリングプレゼン資料()より。


@運輸安全委員会・航空重大インシデント調査報告書(pdf)

日本語版

The Report in English