「IRS振り込め詐欺」で思い出したが、以前ホンモノのIRSより不足税額の追徴通知を受け取ったことがあった。

もちろん書面でであり、「Certified Mail」(配達証明付き郵便)での通達である。

個人の連邦所得税については、毎年税金の申告書「Form 1040」を作成して税額を確定し、不足税額があれば支払い小切手を添付、過払いとなった場合には返金希望、或いは翌年分納税に当てる等指定して、同申告書をIRS宛送付するわけである。

英語のそれもお堅い税務申告書であるから、最初は説明書を一通り読んだり、税法を調べたり聞いたりする必要があり、とっつき難いわけだが、個人のそれも大した金額の所得があるわけでもなく、資産家のお金持ちであれば節税対策に頭を痛めるのであろうが、俺のような中小企業で働く労働者諸君の場合は、所得控除対象項目もタカが知れているから、一度作成してしまえば、翌年からは大体なぞって簡単に作成出来てしまう。

所得控除の対象となると思ったものは所得控除申告して税額を確定し申告書を送付したわけだが、ある所得控除項目についてIRSがそれを否認し、ついては生じた不足税額コレコレを納付せよ、というお達しであった。

税務署の裁定であるから間違っているはずも無く、通達された追徴税額を早々に支払った。

ただ、”狡猾なジャップが米国所得税を誤魔化しやがった”と思われてもイヤだし、考えてみるとこの所得控除は対象となるようでもあり、やはり否認であるような、要は俺には解らないので、「コレコレこうなので、所得控除になるものと考え申告した」旨を書いたレターを添付しておいた。

その後IRSから事実確認の問い合わせが一度あったような気もするが、全ては終了と考え、またいつもの5時から男の飲んだくれの普通の生活に戻っていたが、忘れて暫らくしてIRSより再び通知が来た。

「The previous notice was incorrect. We apologize for any inconvenience this may have caused you.」
とあり、返金の小切手が入っており、額面は利息が付いて少し増えていた。

「俺の勝ちい~、メシうま」と、言うような気持ちは起らず、何と言うか、この国は「凄いな」「敵わないな」、と言う気持ちであった。

日本の政府機関であったならば、行政がいったん裁決したものを個人が何か言ってきたからといって再考し、「誤りであった」などとすることは在ってはならない事であるから、在り得ないことであろう。

社会的にも名が通っていて、それなりに政治力もある大企業が正式に申し開きでもするのならば兎も角として、個人がピイピイ言うのには一々相手にはしない。
将来においては解釈が変わることもあるやも知れぬがそれは将来の話。現裁定は済。
公務員は公僕であり、全体への奉仕者であって個人への奉仕者ではない!などと一蹴されそうである。

「カルチャーショック」と言う言葉があるが、昔であれば日米で生活格差があり、家庭で水ばかりかお湯も出る生活、水洗便所、皆が持つ自家用車、巨大なスーパー、自由な生き方や強い個人主張等にショックを受けたかもしれないが、今は左程格差は感じられず、トイレなどは便座が温かったりしてむしろ日本のほうが贅沢である。 そうゆう面では「カルチャーショック」というのは感じないのだが

IRSの一件は、俺にとってカルチャーショックであった。


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あの頃はPCやプリンターといったものは持っていないので、返信レターは手書きである。複写も出来ないからレーターの写真を撮って自分の控えにしている。