後藤氏を介してISISが要求している後藤氏と交換相手の、「Sajida Mubarak Atrous al-Rishawi」と言うのは2005年に起きた、ヨルダンの首都アンマンでの連続ホテル自爆テロ実行犯人の一人という。

「Radisson SAS」「Grand Hyatt」「Days Inn」の3軒のホテルでほぼ同時に自爆テロが決行され、運悪くそこに居合わせた計60名が殺されている。
「Radisson SAS」ホテルでは丁度結婚披露宴があり、そこで自爆テロが決行され、花婿や花嫁の父など36名が殺され最も多くの死傷者を出している。(Wiki

このRadisson SASホテル自爆テロ実行犯がSajidaとその夫だったといい、Sajidaは彼女の「ハラ巻き爆薬」の点火に失敗し、逮捕されている。

ISISにしてみれば、”十字軍に対してジハードの聖戦を決行しイスラムの鉄槌を下した、聖戦の革命的英雄女傑”と言ったところにでもなるのだろうか。

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「Sajida al-Rishawi」革命戦士のジハード装束

今回人質交換に応じることとしたヨルダン政府はSajidaとの交換相手として、昨年12月24日の有志連合空軍によるISIS拠点攻撃時に、乗機のF-16の墜落によりRaqqa近郊でISISに拘束された同国空軍パイロットを指定している。(CNN

ISISはこのF-16を撃墜したものとしているが、米軍は撃墜された事実は無く機体の故障によるものとしている。

戦闘機や、高高度を狙えるような高性能SAM(地対空ミサイル)をISISが運用しているという話は未だ聞かないので、撃墜したとすればMANPADS(携行対空ミサイル)やAAA(対空火器)などによることになるが、これらの実用上の有効射撃高度はいずれも1万ft以下であり、出撃する有志国空軍もこれらに対策もしているので、被弾撃墜の確率は高くはない。

このヨルダン空軍ファイター・パイロットは、2006年にOR(Operation Ready)になった26歳の空軍中尉(1st Lt)だそうだが、捕虜に関する国際条約など気にもせずイスラム原理法を騙って虐殺、生首を掻くISISが相手であるから、放って置けば結果は明らかである。

後藤氏も交換対象に入ってはいるのだろうが、ヨルダン政府が自国民である空軍の中尉を交換のプライオリティーとするのは当然であろう。

今年1月1日には、米軍SF(Special Force)が、Raqqa近郊のISISの拉致拘束者収容施設と思われる処を急襲し、このヨルダン空軍中尉はじめ人質の奪還を試みたと言うが、ISISの激しい抵抗に遭い人質奪還作戦は失敗したという。
この作戦にはヨルダン軍SFも参加していたといわれる。

昨年7月にも米軍SFはISIS人質奪還作戦を行ったというが、これも失敗に終っている。(Washington Post

相手組織内のいわゆる内通者の諜報員情報、実行部隊偵察班、奪還突入部隊の奇襲、支援部隊による直接・間接の支援、其々の任務が完璧に達成されなければ奪還作戦の成功は覚束なく、失敗した場合には内部諜報員情報などは途絶えてしまうことになる可能性も高く、「人質奪還作戦のチャンスは一度」ということになる。

特殊部隊投入による人質奪還というのは、可能性はあるのだろうが、かなり難しいもののようだ。

1月1日時点ではこの空軍中尉の生存は確認されていたことになろうが、その後の状態は不明であり、ヨルダン政府がISISに同中尉生存の証拠を先ず示せ、というのも道理である。

後藤氏の2番目の最期のメッセージ時に同中尉の写真を持ってはいるのだが、何時撮影されたものかは判らない。
Youtubeビデオ -後藤氏は初めのものより声が力強くなっており、恐怖心といったものは看取出来ず、落ち着きすら感じられる。

2番目の最期のメッセージの次の、後藤氏の3番目のメッセージ(Youtube)での指定日の日没も過ぎてしまったことであり、先がいささか不透明になってきたろうか。