まいどお騒がせの北朝鮮であるが、8月29日の発射に続いて9月15日再び「火星12」弾道ミサイルを日本列島を超えて太平洋に撃ち込んでいる。

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 8月29日の発射は若干脱力系に終わっていたので、敗者復活戦というところだが、今回はうまく翔んだようである。

 防衛省によれば、15日0657頃順安付近から北東方向に発射、0704から0706にかけて北海道渡島半島付近から襟裳岬付近の上空を通過し、0716頃襟裳岬の東約2,200㎞の太平洋に落下。飛翔距離は約3,700㎞、最高到達高度は約800㎞としている。

 韓国軍筋では飛翔距離は3,700㎞と同じだが、最高到達高度は770㎞あまりとしている。大した違いはないのだが、地理的関係からして自衛隊の観測値のほうが精度が高いであろう。

 北朝鮮は今回の発射映像も公開している。



 何時ものおばちゃんアナによる放送だが、なんとなく笑える。

 発射場所は前回同様平壌国際空港であるが、今回はより実戦的にTELより直接火星12を発射している。

 TELのタイヤ保護スカートは最後部のものが外されているのが目を惹くが、火星12の発射ブラストはTEL車体下面全体を覆うかなりなものなので、最後部のスカートはブラスト圧に耐え難いのであろう。


 火星12ほどの大型ロケットになると発射噴炎も相当なものだが、TELのタイヤは耐熱性のあるコンバットタイヤであろうが、輸入品であろうから大切に使うようだろうか。

 最近の中露の同種ミサイルや北極星-2のように、ガス圧でミサイルをいったん空中に射出してからミサイルロケットに点火する方式にすれば楽なわけだが、それは現在開発研究中で4月のパレードに登場させたICBMモックアップのような次世代弾道ミサイルに乞うご期待ということであろう。

 火星12はこれまで3回発射して2回飛翔成功であるから、北朝鮮のミサイルとしてはかなり信頼性が高い。

 米本土に届きそうだという火星14の一段目も火星12と同系列のものであり、いずれも飛翔には成功しており、この系統のロケットエンジン推進系は成功作と言えるのであろう。

 今回は実戦的訓練と称しているので、おそらくは800㎏程度と思われる「主体朝鮮式核弾頭」のダミーウエイトを搭載しているのであろう。

 弾頭がエンプティであれば4500㎞程度翔ぶのだろうが、実核戦力としては今回の3700㎞というのが火星12の最大射程であろう。グアムの米軍基地を攻撃するには十分なものである。

 ただし、命中精度はかなり怪しい。北朝鮮は制御系は苦手なようであるから、グアム島内の米軍基地に着弾命中させるのは困難で、島内に着弾する確率も50/50くらいだろうか。

 命中精度の低さを補うものは弾頭威力の大型化であるが、先日実験していたような小型水素爆弾のような大威力小型核弾頭開発の必要性があるのであろう。

 グアムを射程に収めるミサイルとしては火星10(ムスダン)が既に部隊配備されているわけだが、火星10は8回ほど発射して翔んだと言えるのは一発。発射直後の爆発で地上要員に死傷者も出しているといわれる。

 ソ連では成功作であったSSN6をベースにした火星10であるが、ロケットエンジンがタンク内に組み入っていたり制御エンジンが2基だったりと些か複雑なシステムで、また燃料も長期の戦略潜水艦待機に耐える保存性の高い液体燃料と、北朝鮮にとっては些か扱い難い技術のものだったろうか。

 火星10は射程を延ばすために大型化もしているが、十分に咀嚼できない模倣技術の上に更に大きく重くすれば、結果は明らかであったろうか。火星10ムスダンは見事な失敗作であった。

 先日の国連安保理において満場一致で議決をみた北朝鮮経済制裁強化案も、とくに中国そしてロシアの抵抗で原油の輸出禁止等の骨は抜かれたものの、石油製品はじめ北朝鮮への輸出は今後減ってゆくものと予測されるから、北朝鮮にとっては時間との闘いがある。

 今後、核兵器開発とその投射手段である弾道ミサイル開発を北朝鮮は加速してゆくのであろう。