こんなことをしたというのは話には聞いたことがあったが、動画でみると何とゆうかJust amazed。

 空母のCOD輸送機は今は「C-2A Greyhound」だろうが、この実験が行われた60年代は「C-1 Trader」であり、これは「S-2F Tracker」がベースの機体であるから小型であり些か貧弱なペイロードであったろうか。

 「もっと大っきいのを」という要望があり、「C-130は使えんかな?あれならエンジンでも何でも運べるやろ」「性能表では離発艦が可能になるな。やってみるか・・・」となったようである。

 海軍はC-130を持っていないので機体は海兵隊VR-1飛行隊のKC-130F(BuNo,149798)を借り受け、両翼下の給油システムポッドは取り外し、降着装置には改修型のMk.2 Anti-Skid Braking Systemを導入し、ノーズギア・オレオ緩衝装置のorifice(オリフィス)を小さなものにして着艦の衝撃に適応させている。

 着艦フックの装着も考えられたそうだが機体構造上それは無理なので、行われたのはマイナーな改修のみであり機体はC-130輸送機そのままである。

 テスト機操縦者は正副とも着艦経験豊富な海軍の飛行士であり、ロッキード社にてC-130の資格認定を受けたようだが両名とも4発機の操縦は初めてだったと言う。 C-130の経験豊かな海兵隊パイロットらに着艦訓練を行って・・・という選択も有り得たろうが、空母着艦の何たるかを考えれば自ずと選択は決まったことであろう。

 1963年10月30日から11月にかけて、ボストン沖500浬の北大西洋上の空母フォレスタル(USS Forrestal CV-59)でC-130の発着艦テストは行われている。
 
 生憎当日の海上は白ウサギが沢山飛び跳ねている状態で些か荒れていたのだが、実機運用試験には却ってもってこいの海象状況とも言えようが。

 合計タッチ&ゴー29回。 着艦21回そして発艦21回を見事に実施している。

 

☆テスト機の乗員☆
 Pilot: Lt. James H Flatley III
 Co-Pilot: Lt.Cmdr. W.W. Stovall
 Flight-engineer: ADR1 Ed.F. Brenann
 Lockheed test pilot: Ted H Limmer Jr.

 合成風速は40~50kns程といい、機体重量85,000lbsで267ftで着艦機体停止したという。機体重量121,000lbsでも着艦に460ft、発艦に734ftであったという。 着艦は長さ650ftというアングルド・デッキを使用しても可という数字であり、全般に性能には余裕がみられたという。

 陸上大型機であり、気になる艦橋とのクリアランスであるが、翼端より15ft ! というから余裕だね。
 
 さすがに実運用はリスクが高すぎるとして「C-130 Super-COD」の実用化は見送られたそうである。

KC130CV59
US NAVY Photo

 これまで空母で発着艦した航空機ではC-130が最大の機体になる。 初飛行は1954年という旧い輸送機だが改良をされつつ現在でもJ型の生産が続いている。 様々な特殊用途にも使用されているが、考えられないような無理な運用をすることが有り得る戦術輸送機であるから、全般に余裕のある設計であり冗長性を持った機体なのであろう、言う迄も無くC-130は戦術輸送機の傑作機である。 せっかちで思考がやや短絡的なところもあり余裕を無駄と捉えることの多い日本人には、このような機体はなかなか出来難いところだろうか。

参考

KC-130 Suitability trials (pdf)

The Aviationist The Story of the C-130 Hercules that landed on USS Forrestal