支那大陸の武漢で発生していた肺炎似の奇病が人から人へと感染伝播する「感染症」だと中国政府が公表したのが去る1月20日であるから、公式には僅か二月チョットの間にほぼ全世界に伝播し、今や世界の感染者は66万人、死者は3万を超えたという。 そして未だ日々倍々ゲームで増え続けているので終息の先は見えない。

 と書いたところでニュースを見たら、世界の感染者数は72万人、死者は33,925人となっていた。

 米国でもあっという間に感染が広がり、全米の感染者は14万人を超え、死者は2,467人というのが今日の数字である。

 不要不急の外出が禁止され、学校は休校。人の集まるレストランやバーなどは閉鎖されている。 在宅勤務が出来るところも限度があろうし、レイオフなども当然増えてきている。 生活への影響や経済的損失もこの先どれ程までになるのか想像はつかない。

 病気であろうから支那の習近平に請求書を回すわけにもゆかぬのだろうし、困ったものである。

 米国での感染者第一号を出したおらが町でも当然の如く感染者は増えてきており、ここ当地域のSnohomish county(スノホミッシュ郡 人口約82万)での感染者数は1,000人に迫ろうとしている。死者は23名で殆どは高齢者であるが、木曜には感染した路線バスの41歳の運転手が亡くなったと言い、年齢に関係なく十分な致死性を持つウイルスなのだろう。 ドリフのメンバーだった志村けんもこの病魔に斃れたというが、確かに肺がやられれば呼吸が出来ないから誰でも死ぬわけか。

 当地域の病院(Providence Everett,Sweedish Edmond,Evergreen Monroe & Cascade Valley Arlington)のベッド数は計721床といい、うちICU(国際基督教大学 集中治療室)は87ユニットという。

 当地域の感染者のなかで現在入院中の者は69名というからまだ対応可能なところだろうが、今後爆発的に要入院患者が増加したら「医療崩壊」ということも有り得ようし、医療関係者はここ当分のあいだ緊張した毎日が続くことだろうか。 金曜に連邦備蓄の医療器材9パレットがEverettに到着したと言い、内に数百床の簡易ベッドを含むので今後簡易病床を設置するのだという。

 感染第一号の治療経費は20万ドルだったというが、感染者が爆発的に増加してくれば同じような治療は出来難くなろう。

 俺がついに武漢肺炎に倒れ入院する頃は一万人目くらいの入院患者になるだろうから、治療は「20ドル・コース」ということになってしまうだろうか。 もはや俺専用の個室でピチピチの若いナースが青い瞳で覗きこみ体を寄せて「ココ痛イノ?」「いや、もっと下のほうだよ」ということは望めず、何十年も倉庫に積んであった州軍のカビ臭い野戦テントにずらりと並べられた簡易ベッドに寝かせられ、ボランティアに応じて来た「昔は若い兵隊に随分誘われたのよ」と今では信じ難いことを言う凄い体形のベトナム戦争に従軍したのが自慢のシワシワの元看護婦が担当。 呼吸も細く朦朧としている俺は「ユー、OK?!」と患者の糞尿を片付けたばかりの黄色いゴム手袋で頬をピシャピシャ叩かれたりするわけか。 息も苦しくなり俺もとうとうこれまでかと観念した頃にやっと「先生の回診です」の声、九死に一生!助かったと思って先生の顔を見ると何処かで見たような? ああ、ウチのネコの去勢手術をしてくれた犬猫病院の「ジョンソン先生!」、「医者が足りなくてね、僕も召集されたよ。さあ診てあげよう、前脚出して」 もはや即死を望む!

 最悪の場合には、先の大戦でのわが皇軍のレイテ島オルモック陸軍野戦病院の様相を呈するになろうか。
「野戦病院とはまったく名のみにして何らの設備も無く、負傷者は竹藪の中に収容しあり。陸上部隊最前線戦闘の一端をうかがい知る。 この朝ついに有田兵長うなりつつ不帰の客となる。」