米国当局による福島原発事故での年間想定被曝量のデータが発表されているようだ。
National Nuclear Security Administration (NNSA), Department of Energyのサイト
放射性物質が現状のまま漏出した場合の年間予測のようだが、17日に東電が発表している「事故の収束に向けた道筋」でも「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられる」とする「ステップ2」に到達するまでに、今から少なくとも6~9ヶ月はかかるとしているので、当該地域被曝量は凡そこの予測に沿ったものになると思われる。
屋内と屋外の被曝量差は考慮していないとのことで、日本の当局の「屋内では4分の1から10分の1」に低減するとの見解とは異なるが、建物の構造や密閉度にもよるだろうし、「普通の生活状態では屋内も屋外も被曝量レベルは変わらない」との実測例もあるようだから、同一線量と考えたほうがむしろ理に適っていそうである。
図の赤色地域は年間被曝量が20ミリシーベルトを超えるので、少なくともこの地域の帰宅は半年以上先、恐らくは1年以上先となるだろうか。
少なくともこの地域では、普通の生活が出来るようにするには、汚染された土壌の徐染作業が必要になるのだろうから、一体どうするのか。
陸地ばかりでなく、海洋への放射性物質漏出がある。
2号機付近から海へ漏出していた放射性物質汚染水は、「520立方メートルで4,700テラ・ベクレルと推定される」という。
4日から9日にかけて”緊急避難”的に放出した放射能低濃度汚染水は1万トンといい、0.15テラ・ベクレルになるという(保安院4月15日)。
保安院は監督官庁として、東京電力に対して、海洋での放射性物質監視強化と報告を指示しているようだが、あまりに役所的であり、これは当事者の東電任せでなく、国の然るべき機関が主体となって監視・データ収集すべきところだろう。
東電は原子力発電所取水口や排出口でのモニターは日頃行っているのだろうが、沖合いの海洋での観測についてはどの程度のスキルや、現在の状況下での余力を持つものか解らない。
保安院から問題指摘があったということで、東電は一部の核種については観測データを現在公表していない。
客観性、信頼性が何より重んじられる放射性物質の汚染というクリテカルな監視問題で、事故の当事者である東電にデータの管理を任せきりというのはないであろう。
文科省も多少の監視体制を敷いているようだが、特に漁獲対象となる海生物、海流や海水層、海底地質なども総合的に考慮したシステマチックなモニター体制を敷いて、人類史上初めてであろう海洋の大規模放射能汚染の全体像データの監視・収集に日本は努めるべきだろう。
海流からすると南の方に流れるようだが、沿岸漁業にとって深刻な死活問題になりかねまい。
放射性物質による障害というのは遅発性であるから、既に頭髪や生殖機能に障害が発生しているようなベビーブーマーのおやぢは兎も角として、子供や将来のある若い人に安全が確認されていないものを食わせるわけにはいくまい。
この海域の魚貝類を安心して国民に消費してもらうには、正確なデータの収集とその開示による以外あるまいが。
今度日本に行った時、俺の好きな回転寿司の〆鯖が喰えなくなるようだと困るのだが。
◇◇◇毎日新聞ネット
東日本大震災:福島第1原発事故 米が推計の累積被ばく線量公表 日本より精緻な分析
◇80キロ圏内で年1ミリシーベルト超え
【ワシントン海保真人】米エネルギー省は、東京電力福島第1原発の周辺地域で事故後1年間に受ける推計の累積被ばく線量の予測図を発表した。推計では、日本政府が「計画的避難区域」の基準とした年間被ばく線量20ミリシーベルトの範囲が、原発から半径30キロ圏を超えて北西方向に40~50キロ程度まで広がっており、先に日本政府が示した汚染拡大の予測とほぼ同じ内容となった。一方、30キロから米国が自国民に退避を求めた80キロまでの広範囲で、平常時の人工的被ばく限度1ミリシーベルトを超える恐れがあることを示している。
同省に属する国家核安全保障局による18日付の評価結果として発表した。予測図によると福島第1原発から北西へ50キロ近い地点にかけて、1年間とどまり退避しなかった場合、20ミリシーベルトかそれ以上の累積線量を受けると推計される。屋内でも浴びる放射線量は減少しないという仮定の下で推計。1日24時間を屋外で過ごしたという計算と同じことになる。
日本政府が公表した予測図には、20キロ圏内の累積線量値や1~10ミリシーベルトの低線量の被ばく範囲は示されておらず、米側の方が精緻な内容だ。
米国は福島の事故を巡り、大気収集機「コンスタントフェニックス」や無人機「グローバルホーク」を派遣するなど、最新機材で独自に情報収集してきた。今回の予測図は、航空機材による計334時間の飛行観測▽日米当局の約15万件の地上での計測値▽大気収集機などでの504件の大気サンプルの収集データ--に基づくもの。
同省はまた、17日までの計測の結果、放射線のレベルは引き続き低減しているが、原発の周囲の数百キロ四方で水や土壌を含む農業にかかわる監視が必要だとしている。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110421ddm012040151000c.html
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◇◇◇読売新聞ネット
首相に怒号、避難所で「早く帰らせてくれ」
菅首相は21日、福島県の佐藤雄平知事と会談後、福島第一原発周辺の住民らが避難する同県田村市の市総合体育館を訪れた。
菅首相が姿を現すと、約50人の避難者からは「早く原発を抑えてくれ」「早く、うちへ帰らせてくれ」と怒号が上がった。
避難住民の一人、同県葛尾村の東海林みゆきさん(51)は、菅首相の去り際に「早く家に帰らせて」と窮状を訴えた。首相は「全力を尽くします」と応じたという。東海林さんは「どんな思いで生活しているか、わかってほしかった」と声を詰まらせた。
(2011年4月21日16時22分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110421-OYT1T00537.htm?from=main1
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