JAL787とANA787機でバッテリーが”熱暴走”した問題は、日米の専門官が鋭意原因究明を行なっている最中であり、門外漢のおっさんが今ここでぶつぶつ言っても意味は無いのだが、ボーイング787型機はこれから一方の主力となる旅客機であり、おっさんとしても近い将来に、客室のいちばん後ろのほうの便所の隣の小さなエコノミー席に、”お客様”として座る機会もあることだろうし、我が身の安全に係わる話でもあるからやはり気になるぅ。
そもそも飛行機というのは、男の子なら皆そうだろうが、物心ついた頃には興味を持つだろうし、嫌いでない。
おっさんとなっても、この世で2番目に関心があるモノだから、”見たり触ったりする”ことが大好きである。
話は飛行機のバッテリーなのだが、これも世のバッテリーと同じく「鉛蓄電池」から「ニッケル・カドミウム(ニッカド)」のものが導入され、そして今回注目を集めている「リチウム・イオン」形式のものが現在は導入が始まっている。
バッテリーというのは基本的に危険物であり、確実な点検と適正な管理が欠かせず、しかも重くて大きさもあるので、飛行機に装備するにあたっては、位置(エンジンから離す、水素ガス通風、機体重心、電気負荷)と装備方法(強度と点検の容易さ)に苦労するものだとの主旨が、竹ちゃんマンが置いていった「航空工学講座5 航空機電気装備」という古い本に書いてあった、よ~な気がする。
リチウム・イオン・バッテリーは非常に軽いので(同能力ならニッカドの半分の容積・重量だという)、近年旅客機へも導入され始め、A380にも装備されている(補助照明用)そうだが、メインバッテリーとして使用するのは787が最初の機体なのだという。
「軽くて小さい」というのは如何にも航空機用に向いていそうだが、半面リチウム・イオン・バッテリーは従来のものに比べ”敏感”だといい、過電力や過充電等で”熱暴走”を起こし易く、又出火した場合には消火が難しいのだという。
ボストンでのJAL機出火では空港消防が到着したのが1040、鎮火報告が1219であった。787機の消火・救難教育を受けた完全装備の消防士が、赤外線センサーで火元を探知しHaltronという特殊消火剤を用いて消火し高熱のバッテリーを機外に搬出している。
もし飛行中にこれが生起した場合、完全武装で消化剤を携行した消防士が偶々乗り合わせている可能性は高くないので、乗務員などが手持消火器等で鎮火させることはかなり難しいであろう。
能力は高いが、危険度も高く管理が難しいことになるが、今回のJAL、ANA機のバッテリーの件も、これが従来の「ニッカド」であったなら、過充電などで熱暴走を起こしたとしてもここまで酷くはならないだろうとの話も出ていたりしている。(そもそも「熱暴走」という化学的現象自体ニッカドでは起き得ない)
ビジネス・ジェットであるが、セスナ・サイテーション525Cは、リチウム・イオン・バッテリーを装備して販売を開始したのだが、グラウンド・パワーに接続して充電を始めるとバッテリーが発火するという問題が発生し、結局FAAは同機でのリチウム・イオン・バッテリーの使用を禁じ、ニッカドか鉛蓄電池に変更するよう耐空性改善命令を出している。(AD#2011-21-51)
セスナ・サイテーションでは、リチウム・イオン・バッテリーの発火の危険に対する安全性を技術的に保障出来なかったことになるだろうが、ボーイング787の場合は、あらゆる面で余裕のある大型旅客機であり、リチウム・イオン・バッテリーの採用に当たっても十分な安全性を技術的に確保出来たものとしていたのだが、結果は驚くべきことになってしまっている。
1月24日にNTSB委員長がJAL機バッテリー発火事案の調査状況経過について記者会見を開いているが、「原因はまだ解らない」としている。
発火の可能性があるのでは運航することは出来ないから、同型機の運行停止が何時まで続くのかの見込みすら立たない状況になっている。
NTSBは発火したJAL機バッテリーには、熱暴走(thermal runaway)と電気ショート(short circuiting)の痕跡が見られたというが、それが何故発生したのかや、発火に至るまでの過程などが未だ解明されておらず、また、本来そうゆう状況の発生を防止するデザインが多重に組み込まれているものが何故巧く機能しなかったのかも調査中のところだという。
「Investigative Update」 NTSB
リチウム・イオン・バッテリーは、そもそも航空機に装備出来るだけの安全性が技術的に保障できる段階にあるのかどうか?という議論も今後起る事だろう。
◇◇◇参考:産経新聞
日米の787トラブル 電池の製造時期にずれ
2013.1.26 00:54
日米で出火や発煙トラブルの続いた日航、全日空ボーイング787のGSユアサ(京都市)製バッテリーは、日航機の方が全日空機より製造時期が約10カ月新しいことが25日、国土交通省の調査で分かった。国交省は発煙・出火の原因が、特定の時期に製造工程で生じたものではないとみており、25日も米連邦航空局(FAA)と合同でGSユアサに立ち入り検査し、製造記録などを調べた。
国交省によると、製造時期は全日空機のメーンバッテリーが2011年11月、日航機の補助動力装置(APU)用バッテリーが昨年9月。いずれもリチウムイオン電池8個をつなげた同型で、全日空機は昨年10月、今回発煙したバッテリーに交換してから456時間飛行。日航機は機体が完成した同11月に搭載、出火までの飛行時間は169時間だった。運輸安全委員会は、過充電などを防ぐバッテリー内蔵の制御装置が神奈川県藤沢市の電子機器メーカー製だったことを明らかにした。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130126/dst13012600560000-n1.htm
◇◇◇
NTSB委員長の記者会見:
素人にも解り易いようにと、よく配慮されたことが窺える説明である。 記者達からの同じ主旨の繰り返しの質問にも、都度懇切丁寧に答えている。
原因はまだ解らない段階であるが、原因が何であれ責任の所在がどうであれ、バッテリーから火煙を上げたという事実は、航空用バッテリーとして技術的には敗北であろう。
そもそも飛行機というのは、男の子なら皆そうだろうが、物心ついた頃には興味を持つだろうし、嫌いでない。
おっさんとなっても、この世で2番目に関心があるモノだから、”見たり触ったりする”ことが大好きである。
話は飛行機のバッテリーなのだが、これも世のバッテリーと同じく「鉛蓄電池」から「ニッケル・カドミウム(ニッカド)」のものが導入され、そして今回注目を集めている「リチウム・イオン」形式のものが現在は導入が始まっている。
バッテリーというのは基本的に危険物であり、確実な点検と適正な管理が欠かせず、しかも重くて大きさもあるので、飛行機に装備するにあたっては、位置(エンジンから離す、水素ガス通風、機体重心、電気負荷)と装備方法(強度と点検の容易さ)に苦労するものだとの主旨が、竹ちゃんマンが置いていった「航空工学講座5 航空機電気装備」という古い本に書いてあった、よ~な気がする。
リチウム・イオン・バッテリーは非常に軽いので(同能力ならニッカドの半分の容積・重量だという)、近年旅客機へも導入され始め、A380にも装備されている(補助照明用)そうだが、メインバッテリーとして使用するのは787が最初の機体なのだという。
「軽くて小さい」というのは如何にも航空機用に向いていそうだが、半面リチウム・イオン・バッテリーは従来のものに比べ”敏感”だといい、過電力や過充電等で”熱暴走”を起こし易く、又出火した場合には消火が難しいのだという。
ボストンでのJAL機出火では空港消防が到着したのが1040、鎮火報告が1219であった。787機の消火・救難教育を受けた完全装備の消防士が、赤外線センサーで火元を探知しHaltronという特殊消火剤を用いて消火し高熱のバッテリーを機外に搬出している。
もし飛行中にこれが生起した場合、完全武装で消化剤を携行した消防士が偶々乗り合わせている可能性は高くないので、乗務員などが手持消火器等で鎮火させることはかなり難しいであろう。
能力は高いが、危険度も高く管理が難しいことになるが、今回のJAL、ANA機のバッテリーの件も、これが従来の「ニッカド」であったなら、過充電などで熱暴走を起こしたとしてもここまで酷くはならないだろうとの話も出ていたりしている。(そもそも「熱暴走」という化学的現象自体ニッカドでは起き得ない)
ビジネス・ジェットであるが、セスナ・サイテーション525Cは、リチウム・イオン・バッテリーを装備して販売を開始したのだが、グラウンド・パワーに接続して充電を始めるとバッテリーが発火するという問題が発生し、結局FAAは同機でのリチウム・イオン・バッテリーの使用を禁じ、ニッカドか鉛蓄電池に変更するよう耐空性改善命令を出している。(AD#2011-21-51)
セスナ・サイテーションでは、リチウム・イオン・バッテリーの発火の危険に対する安全性を技術的に保障出来なかったことになるだろうが、ボーイング787の場合は、あらゆる面で余裕のある大型旅客機であり、リチウム・イオン・バッテリーの採用に当たっても十分な安全性を技術的に確保出来たものとしていたのだが、結果は驚くべきことになってしまっている。
1月24日にNTSB委員長がJAL機バッテリー発火事案の調査状況経過について記者会見を開いているが、「原因はまだ解らない」としている。
発火の可能性があるのでは運航することは出来ないから、同型機の運行停止が何時まで続くのかの見込みすら立たない状況になっている。
NTSBは発火したJAL機バッテリーには、熱暴走(thermal runaway)と電気ショート(short circuiting)の痕跡が見られたというが、それが何故発生したのかや、発火に至るまでの過程などが未だ解明されておらず、また、本来そうゆう状況の発生を防止するデザインが多重に組み込まれているものが何故巧く機能しなかったのかも調査中のところだという。
「Investigative Update」 NTSB
リチウム・イオン・バッテリーは、そもそも航空機に装備出来るだけの安全性が技術的に保障できる段階にあるのかどうか?という議論も今後起る事だろう。
◇◇◇参考:産経新聞
日米の787トラブル 電池の製造時期にずれ
2013.1.26 00:54
日米で出火や発煙トラブルの続いた日航、全日空ボーイング787のGSユアサ(京都市)製バッテリーは、日航機の方が全日空機より製造時期が約10カ月新しいことが25日、国土交通省の調査で分かった。国交省は発煙・出火の原因が、特定の時期に製造工程で生じたものではないとみており、25日も米連邦航空局(FAA)と合同でGSユアサに立ち入り検査し、製造記録などを調べた。
国交省によると、製造時期は全日空機のメーンバッテリーが2011年11月、日航機の補助動力装置(APU)用バッテリーが昨年9月。いずれもリチウムイオン電池8個をつなげた同型で、全日空機は昨年10月、今回発煙したバッテリーに交換してから456時間飛行。日航機は機体が完成した同11月に搭載、出火までの飛行時間は169時間だった。運輸安全委員会は、過充電などを防ぐバッテリー内蔵の制御装置が神奈川県藤沢市の電子機器メーカー製だったことを明らかにした。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130126/dst13012600560000-n1.htm
◇◇◇
NTSB委員長の記者会見:
素人にも解り易いようにと、よく配慮されたことが窺える説明である。 記者達からの同じ主旨の繰り返しの質問にも、都度懇切丁寧に答えている。
原因はまだ解らない段階であるが、原因が何であれ責任の所在がどうであれ、バッテリーから火煙を上げたという事実は、航空用バッテリーとして技術的には敗北であろう。