米国ではエボラ熱患者を看護中に感染してしまった2名の看護婦をはじめ、今日まで計9名のエボラ熱患者の治療事例が生じている。
その内で死亡に至ったのは、訪米中だったリベリア籍の男性患者1名のみである。
院内感染した「看護婦2号」も「看護婦1号」に続いて昨日完全治癒退院しているので、7名は完治しており、先日発症した「国境無き医師団」に参加し帰国したニューヨークの医師は現在入院中であるが、これも完治することに疑問の余地はなさそうである。
エボラ熱は、早期発見で適切な医療を受けられれば、死に至るものではないことがわかる。
所謂”手遅れ”の状態になったり、老幼等で体力が弱かったり、持病があるような場合には、生命の危険を伴う極めて危険なウイルスであることは、その通りなのであろう。
死亡したイベリア人男性患者の場合、初診時にはいったん帰宅せられ、後症状が悪化してから救急搬送で入院している。
同居していた女性、子供、親戚等、当該患者と接触があった48名が隔離観察措置となっていたわけだが、結局これら周囲の人間からは感染者は生じていない。
死亡したこの患者の場合、症状は発熱から嘔吐、下痢などに進んだ状態であったようだが、それでも同居人に感染者が発生しなかったというのは、些か意外というべきだろうか。
エボラ熱感染が生じるのは、発熱など患者の発症後という。
事例が少ないので安易な楽観論は禁物だろうが、発症初期段階でのエボラ熱の感染力というのは、意外と弱いものであることがわかる。
エボラ・ウイルスの体外での生存期間というのは、乾燥環境で数時間、”快適温度・湿度”の環境でも数日程度といわれ、感染も人体の粘膜やキズ口などからの侵入であるから、初期患者の触れたドアノブや椅子等から2次感染する可能性は極めて低く、「看護婦2号」の利用した航空機や、ニューヨークの医師が利用した地下鉄の乗客などから感染者が発生する可能性は極めて低いであろう。
テロの時代であり、細菌やウイルスを利用した所謂「生物兵器」によるテロも憂慮される時代だが、NIHの専門家の大先生(Dr.Fauci)に言わせると、テロリスト側に立って考えた場合、「エボラ熱ウイルスは選択候補外になる」というのも、この感染力では兵器足り得ず、なるほどと思わせる。
大先生は又、西アフリカから帰国する医療関係者全員をいったん隔離する必要はないとも言う。
隔離措置などの防護対策も専門家の意見をよく聴取し、政治的にでなく科学的に決められるべきものであろう。
患者の症状がピークになった場合にはウイルスが皮膚にも出てくる例があるというから、いわば”全身ウイルス化”した状態では感染力もかなりのものなのであろう。
西アフリカ流行地域のように、保健衛生や医療インフラが基本的に脆弱で、いったん流行すれば病院も満杯で収容できず、患者が街中で行倒れ、それを助けようと触れる人がおり、医療関係者ですら基本的な防護装備も教育訓練も出来ていないといった環境では、エボラ熱はその猛威を存分に振るうことになる。
米国や日本でもエボラ熱の国内侵入・感染阻止の態勢を強化しているようだが、流行地西アフリカでのエボラ熱感染拡大を阻止できずに、感染者が倍々ゲームで増えていった場合には、日本など先進諸国での感染発生のリスクも倍々と増えて来ることになる。
自国防護に徹しているだけでは、終にはどこかで防護が破られ、国内に感染者の発生をみることになる。
西アフリカでのエボラ熱感染流行の沈静化というのは、結局は先進諸国にとっても我が身のことなのである。
米国は大規模に軍を動員して、現地西アフリカでのエボラ熱流行阻止作戦を展開中なわけだが、派遣兵員はETU(治療設備)の設置などに当たり、直接に患者に接することはないので、感染防止の十分な保障はあると思われる。
軍の健康管理体制も充実しているので、万一感染者が発生しても早期に適切な治療の開始が見込まれ、余程に運が悪くでも無い限り、派遣員の生命の十分な安全保障はされていると言えよう。
感染者1万を超え、死亡患者は5千、そして更に増え続けているという現状では、個別の国際ボランティア団体による援助だけでは対処は最早困難で、相当な規模の軍部隊の投入による、組織的かつ系統立ったロジステックと、機動力に富む迅速な大規模支援網の提供が必要なのであろう。
日本は国際貢献において、武力の行使を伴う多国籍軍やPKFのような活動には参加しないといい、武力を使用することの無い、純粋に平和的手段での国際貢献活動を指向しているとすれば、西アフリカのエボラ熱対策支援などは真に”打って付け”と思われるが、政治家や大手マスコミなどからも”自衛隊を派遣すべし”の声が一向に聞こえないのはどうゆうことだろうか。
「Ebola Facts: New York Times」
「あなたのまわりの小さなともだちについて」ーブログー
研究者のブログのようだが、時間を割いて研究者の方が一般向けに情報発信する姿勢は、時節柄素晴らしい。
「感染症診療の原則」
感染症の専門医である青木先生
「国境なき医師団ー日本」
その内で死亡に至ったのは、訪米中だったリベリア籍の男性患者1名のみである。
院内感染した「看護婦2号」も「看護婦1号」に続いて昨日完全治癒退院しているので、7名は完治しており、先日発症した「国境無き医師団」に参加し帰国したニューヨークの医師は現在入院中であるが、これも完治することに疑問の余地はなさそうである。
エボラ熱は、早期発見で適切な医療を受けられれば、死に至るものではないことがわかる。
所謂”手遅れ”の状態になったり、老幼等で体力が弱かったり、持病があるような場合には、生命の危険を伴う極めて危険なウイルスであることは、その通りなのであろう。
死亡したイベリア人男性患者の場合、初診時にはいったん帰宅せられ、後症状が悪化してから救急搬送で入院している。
同居していた女性、子供、親戚等、当該患者と接触があった48名が隔離観察措置となっていたわけだが、結局これら周囲の人間からは感染者は生じていない。
死亡したこの患者の場合、症状は発熱から嘔吐、下痢などに進んだ状態であったようだが、それでも同居人に感染者が発生しなかったというのは、些か意外というべきだろうか。
エボラ熱感染が生じるのは、発熱など患者の発症後という。
事例が少ないので安易な楽観論は禁物だろうが、発症初期段階でのエボラ熱の感染力というのは、意外と弱いものであることがわかる。
エボラ・ウイルスの体外での生存期間というのは、乾燥環境で数時間、”快適温度・湿度”の環境でも数日程度といわれ、感染も人体の粘膜やキズ口などからの侵入であるから、初期患者の触れたドアノブや椅子等から2次感染する可能性は極めて低く、「看護婦2号」の利用した航空機や、ニューヨークの医師が利用した地下鉄の乗客などから感染者が発生する可能性は極めて低いであろう。
テロの時代であり、細菌やウイルスを利用した所謂「生物兵器」によるテロも憂慮される時代だが、NIHの専門家の大先生(Dr.Fauci)に言わせると、テロリスト側に立って考えた場合、「エボラ熱ウイルスは選択候補外になる」というのも、この感染力では兵器足り得ず、なるほどと思わせる。
大先生は又、西アフリカから帰国する医療関係者全員をいったん隔離する必要はないとも言う。
隔離措置などの防護対策も専門家の意見をよく聴取し、政治的にでなく科学的に決められるべきものであろう。
患者の症状がピークになった場合にはウイルスが皮膚にも出てくる例があるというから、いわば”全身ウイルス化”した状態では感染力もかなりのものなのであろう。
西アフリカ流行地域のように、保健衛生や医療インフラが基本的に脆弱で、いったん流行すれば病院も満杯で収容できず、患者が街中で行倒れ、それを助けようと触れる人がおり、医療関係者ですら基本的な防護装備も教育訓練も出来ていないといった環境では、エボラ熱はその猛威を存分に振るうことになる。
米国や日本でもエボラ熱の国内侵入・感染阻止の態勢を強化しているようだが、流行地西アフリカでのエボラ熱感染拡大を阻止できずに、感染者が倍々ゲームで増えていった場合には、日本など先進諸国での感染発生のリスクも倍々と増えて来ることになる。
自国防護に徹しているだけでは、終にはどこかで防護が破られ、国内に感染者の発生をみることになる。
西アフリカでのエボラ熱感染流行の沈静化というのは、結局は先進諸国にとっても我が身のことなのである。
米国は大規模に軍を動員して、現地西アフリカでのエボラ熱流行阻止作戦を展開中なわけだが、派遣兵員はETU(治療設備)の設置などに当たり、直接に患者に接することはないので、感染防止の十分な保障はあると思われる。
軍の健康管理体制も充実しているので、万一感染者が発生しても早期に適切な治療の開始が見込まれ、余程に運が悪くでも無い限り、派遣員の生命の十分な安全保障はされていると言えよう。
感染者1万を超え、死亡患者は5千、そして更に増え続けているという現状では、個別の国際ボランティア団体による援助だけでは対処は最早困難で、相当な規模の軍部隊の投入による、組織的かつ系統立ったロジステックと、機動力に富む迅速な大規模支援網の提供が必要なのであろう。
日本は国際貢献において、武力の行使を伴う多国籍軍やPKFのような活動には参加しないといい、武力を使用することの無い、純粋に平和的手段での国際貢献活動を指向しているとすれば、西アフリカのエボラ熱対策支援などは真に”打って付け”と思われるが、政治家や大手マスコミなどからも”自衛隊を派遣すべし”の声が一向に聞こえないのはどうゆうことだろうか。
「Ebola Facts: New York Times」
「あなたのまわりの小さなともだちについて」ーブログー
研究者のブログのようだが、時間を割いて研究者の方が一般向けに情報発信する姿勢は、時節柄素晴らしい。
「感染症診療の原則」
感染症の専門医である青木先生
「国境なき医師団ー日本」