読売新聞の社説(引用下記)だが、原子力発電を停止したおかげで、安価で安定した電力供給体制がゆらぎ、電力料金は2割も3割も値上がりし、火力発電依存に偏重してしまった結果、毎年4兆円もの燃料費が以前より増え、これまで国民が営々として築いてきた日本の国富の巨額流出が続いている。
このままでは経済再生も覚束ないし、火力燃料の輸入先も政情不安が続く中近東に偏っているので、エネルギー安全保障上も不安があり、枕を高くしては寝られない。
これは大変だ、今すぐ原発を再稼動しないと、日本は潰れてしまうぞ!
しかし待てよ。
アメリカでは原発は発電コストが火力に劣るので、原発の新設は進んでいないという。
日本でも発電コストの比較で、原発が火力などに比べ極めて安価であるなどというデータはなく、原発の発電コストは現状でも安くはないという話だったはず。
「原発が停止したおかげで火力燃料費が毎年4兆円増えた」と書かれれば、原発は少なくとも年間4兆円は火力より発電コストが安いという印象になるが、モノの原価というのはそうゆう話ではあるまい。
原子力発電であれば、それなりの設備も要るし、周辺住民対策等、原子力政策推進のための相当な額の国民の税金も投入されよう。
原発は燃料費そのものは安いのだが、発電コストは高いものである。
新旧設備交替などでの所謂「廃炉」となれば、原子炉など主要部分は残留放射能があるので特殊な技術と、特別な廃棄場所が必要になる。
使用済み核燃料も然りで、いくら再利用したとしても核燃料廃棄物は必ず発生する。
これら核廃棄物は、ガラスで固めて金属容器などに入れて密閉して(ガラス固化体)、地下数百メートルの深いところに埋めるほか技術的に手はないようだが、現在はその廃棄場所すら決まっていないという。
使用済み核燃料体は、現在は原発敷地内に仮置き?されているようだが、発生した使用済み核燃料廃棄物の数量というのは、2012年末の段階で、ガラス固化体にすると2万5千本ほどになっているのだという。(日経)
地下に埋設管理される予定のこれら「高レベル放射性廃棄物」の処分期間というのは、10万年という。
外国に送るわけにもいかないし、海洋に投棄することも出来ないだろうから、地震が多発する火山活動の活発な、人口密度の高い日本列島で、気の遠くなるような永い期間、確実に安全に地下貯蔵が可能な場所で、住民も納得して受け入れてくれる核廃棄物処分場所をこれから探さなければならない。
そして何よりも、安全なものでなければ、社会に受け入れてはもらえまい。
福島原発で体験した通り、原子炉は電源が停止し、停電になって冷却系の稼動が止まると、数時間後には燃料体の損傷が始まる。
冷却水が抜かれた場合には、即刻燃料体の損傷が始まろう。
自然災害によるばかりでなく、テロやサボタージュ、外国からのミサイルなどによる攻撃というのも、”想定外のこと”ではなく、今後あり得ることである。
原発は、国民皆に明るい幸福な未来を約束する夢のエネルギーなのか?
いくら安全性が確認されたものでも、こうゆう危険な施設は、皇居の近くや大都市近郊には作らないだろうから、助成金で釣られた貧しい地方の民草が、想わぬ放射能の災禍に遭い、塗炭の苦しみを味わうことになる魔物なのか?
「原発をどうするか?」というのは結局は「日本の国民が決めること」である。
新聞などマスコミは、扇情的な記事で一定の方向に国民を煽るのでなく、国民が合理的な判断が出来るような事実を提供するのでなければなるまい。
◇◇◇引用:読売新聞社説◇◇◇
エネルギー政策 全原発停止を終わらせよう
◆電力安定供給の回復が急務だ◆
安全性の確保を大前提に、原子力発電所の稼働ゼロに終止符を打つ。安価で安定した電力供給を可能とする最適な電源構成を構築する。
東日本大震災後に揺らいだ電力供給体制の正常化に向けた重要な年である。
安倍政権は、原発を活用する現実的なエネルギー政策を推進しなければならない。
◆最適な電源構成を示せ
電力は「経済の血液」とも言われる国力の基盤である。安定供給を回復しないと、安倍政権の経済政策「アベノミクス」も、成功はおぼつかない。
政府は今月中にも、2030年の最適な電源構成の検討に入るという。各電源が長所と短所を補い合う「ベストミックス」を明確に掲げることが重要だ。
震災前、日本の電力は、火力発電6割、原発3割、水力を含む再生可能エネルギー1割という比率で賄われていた。
ところが、東京電力福島第一原発の事故の影響で、定期検査を終えた原発を再稼働できなくなり、現在は全発電量の9割を火力に頼る状況になっている。
過度の火力依存の弊害は大きい。液化天然ガス(LNG)などの燃料費は、震災前より年4兆円近く増え、電気料金は企業向けが3割、家庭向けも2割上昇した。
燃料のほぼすべてを輸入しているため、巨額の国富流出が続いている。政情の不安定な中東への依存が強まり、エネルギー安全保障の観点で不安がある。温室効果ガスの排出量も急増した。
一方、太陽光や風力などの再生エネは国内で自給でき、地球環境への負荷が小さい利点がある。できる限り普及させたい。
ただし、普及拡大のための固定価格買い取り制度は、コストが電気料金に転嫁され、利用者負担に跳ね返る問題がある。
再生エネは、日照や風の状況によって発電量が急変するなど、多くの欠点も抱えている。現状では基幹電源とはなり得ない。
原発は燃料費が安く、大量の電力を安定供給できる。政府が、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、中長期的に活用する方針を示しているのは妥当だ。
◆再稼働へ政府は前面に
喫緊の課題は、安全性の確認できた原発を、着実に再稼働することである。
九州電力川内原発(鹿児島県)1、2号機は昨年9月、原子力規制委員会の安全審査に「合格」し、地元自治体の同意も得た。
ところが、書類提出などに手間取り、運転再開は春以降にずれ込む見通しだ。九電はこれ以上の遅れを招かぬよう、準備に万全を期してもらいたい。
第2陣の関西電力高浜原発(福井県)3、4号機は「合格証」に当たる審査書案が決まり、審査は最終段階に入っている。
関電は今秋の再稼働を目指しているが、立地自治体だけでなく、隣接する滋賀県や京都府が事前に同意を得るよう求めるなど、不透明な要素も少なくない。
宮沢経済産業相らは関電任せにするのではなく、地元の説得・調整へ前面に立つべきだ。
再稼働に向けた安全審査を申請している原発は、このほかに16基もある。規制委は安全性を最優先しつつ、効率的な審査に努めてもらいたい。
今後、古くなった原発の更新や新増設を一切行わず、運転開始から40年で原発を廃炉にする原則を厳格に適用すると、49年に国内の原発はゼロとなってしまう。
これでは、原子力産業の将来が見通せず、原発技術を担う人材も育たなくなろう。これから30~40年かかるとされる福島原発の廃炉作業にも支障が出かねない。
最新の原発を開発し、運用することで、高い原子力技術を維持できる。政府は、原発を新増設していく方針を明確化すべきだ。
◆最終処分に道筋つけよ
電力不足に悩む新興国に安全性の高い日本の原発を輸出することは、日本の成長に資するだけでなく、国際貢献にもつながる。
エネルギー資源の乏しい日本にとって、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは必要な政策である。放射性廃棄物の容量削減など、メリットは大きい。
ところが、日本原燃が青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場の完成が当初予定から20年近く延期されるなど、計画の遅れは深刻である。着実な推進が求められる。
原発の活用では、放射性廃棄物の最終処分場の確保は避けて通れない。候補地選定に道筋をつけることが肝要だ。
2015年01月18日 01時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150117-OYT1T50120.html
◇◇◇
このままでは経済再生も覚束ないし、火力燃料の輸入先も政情不安が続く中近東に偏っているので、エネルギー安全保障上も不安があり、枕を高くしては寝られない。
これは大変だ、今すぐ原発を再稼動しないと、日本は潰れてしまうぞ!
しかし待てよ。
アメリカでは原発は発電コストが火力に劣るので、原発の新設は進んでいないという。
日本でも発電コストの比較で、原発が火力などに比べ極めて安価であるなどというデータはなく、原発の発電コストは現状でも安くはないという話だったはず。
「原発が停止したおかげで火力燃料費が毎年4兆円増えた」と書かれれば、原発は少なくとも年間4兆円は火力より発電コストが安いという印象になるが、モノの原価というのはそうゆう話ではあるまい。
原子力発電であれば、それなりの設備も要るし、周辺住民対策等、原子力政策推進のための相当な額の国民の税金も投入されよう。
原発は燃料費そのものは安いのだが、発電コストは高いものである。
新旧設備交替などでの所謂「廃炉」となれば、原子炉など主要部分は残留放射能があるので特殊な技術と、特別な廃棄場所が必要になる。
使用済み核燃料も然りで、いくら再利用したとしても核燃料廃棄物は必ず発生する。
これら核廃棄物は、ガラスで固めて金属容器などに入れて密閉して(ガラス固化体)、地下数百メートルの深いところに埋めるほか技術的に手はないようだが、現在はその廃棄場所すら決まっていないという。
使用済み核燃料体は、現在は原発敷地内に仮置き?されているようだが、発生した使用済み核燃料廃棄物の数量というのは、2012年末の段階で、ガラス固化体にすると2万5千本ほどになっているのだという。(日経)
地下に埋設管理される予定のこれら「高レベル放射性廃棄物」の処分期間というのは、10万年という。
外国に送るわけにもいかないし、海洋に投棄することも出来ないだろうから、地震が多発する火山活動の活発な、人口密度の高い日本列島で、気の遠くなるような永い期間、確実に安全に地下貯蔵が可能な場所で、住民も納得して受け入れてくれる核廃棄物処分場所をこれから探さなければならない。
そして何よりも、安全なものでなければ、社会に受け入れてはもらえまい。
福島原発で体験した通り、原子炉は電源が停止し、停電になって冷却系の稼動が止まると、数時間後には燃料体の損傷が始まる。
冷却水が抜かれた場合には、即刻燃料体の損傷が始まろう。
自然災害によるばかりでなく、テロやサボタージュ、外国からのミサイルなどによる攻撃というのも、”想定外のこと”ではなく、今後あり得ることである。
原発は、国民皆に明るい幸福な未来を約束する夢のエネルギーなのか?
いくら安全性が確認されたものでも、こうゆう危険な施設は、皇居の近くや大都市近郊には作らないだろうから、助成金で釣られた貧しい地方の民草が、想わぬ放射能の災禍に遭い、塗炭の苦しみを味わうことになる魔物なのか?
「原発をどうするか?」というのは結局は「日本の国民が決めること」である。
新聞などマスコミは、扇情的な記事で一定の方向に国民を煽るのでなく、国民が合理的な判断が出来るような事実を提供するのでなければなるまい。
◇◇◇引用:読売新聞社説◇◇◇
エネルギー政策 全原発停止を終わらせよう
◆電力安定供給の回復が急務だ◆
安全性の確保を大前提に、原子力発電所の稼働ゼロに終止符を打つ。安価で安定した電力供給を可能とする最適な電源構成を構築する。
東日本大震災後に揺らいだ電力供給体制の正常化に向けた重要な年である。
安倍政権は、原発を活用する現実的なエネルギー政策を推進しなければならない。
◆最適な電源構成を示せ
電力は「経済の血液」とも言われる国力の基盤である。安定供給を回復しないと、安倍政権の経済政策「アベノミクス」も、成功はおぼつかない。
政府は今月中にも、2030年の最適な電源構成の検討に入るという。各電源が長所と短所を補い合う「ベストミックス」を明確に掲げることが重要だ。
震災前、日本の電力は、火力発電6割、原発3割、水力を含む再生可能エネルギー1割という比率で賄われていた。
ところが、東京電力福島第一原発の事故の影響で、定期検査を終えた原発を再稼働できなくなり、現在は全発電量の9割を火力に頼る状況になっている。
過度の火力依存の弊害は大きい。液化天然ガス(LNG)などの燃料費は、震災前より年4兆円近く増え、電気料金は企業向けが3割、家庭向けも2割上昇した。
燃料のほぼすべてを輸入しているため、巨額の国富流出が続いている。政情の不安定な中東への依存が強まり、エネルギー安全保障の観点で不安がある。温室効果ガスの排出量も急増した。
一方、太陽光や風力などの再生エネは国内で自給でき、地球環境への負荷が小さい利点がある。できる限り普及させたい。
ただし、普及拡大のための固定価格買い取り制度は、コストが電気料金に転嫁され、利用者負担に跳ね返る問題がある。
再生エネは、日照や風の状況によって発電量が急変するなど、多くの欠点も抱えている。現状では基幹電源とはなり得ない。
原発は燃料費が安く、大量の電力を安定供給できる。政府が、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、中長期的に活用する方針を示しているのは妥当だ。
◆再稼働へ政府は前面に
喫緊の課題は、安全性の確認できた原発を、着実に再稼働することである。
九州電力川内原発(鹿児島県)1、2号機は昨年9月、原子力規制委員会の安全審査に「合格」し、地元自治体の同意も得た。
ところが、書類提出などに手間取り、運転再開は春以降にずれ込む見通しだ。九電はこれ以上の遅れを招かぬよう、準備に万全を期してもらいたい。
第2陣の関西電力高浜原発(福井県)3、4号機は「合格証」に当たる審査書案が決まり、審査は最終段階に入っている。
関電は今秋の再稼働を目指しているが、立地自治体だけでなく、隣接する滋賀県や京都府が事前に同意を得るよう求めるなど、不透明な要素も少なくない。
宮沢経済産業相らは関電任せにするのではなく、地元の説得・調整へ前面に立つべきだ。
再稼働に向けた安全審査を申請している原発は、このほかに16基もある。規制委は安全性を最優先しつつ、効率的な審査に努めてもらいたい。
今後、古くなった原発の更新や新増設を一切行わず、運転開始から40年で原発を廃炉にする原則を厳格に適用すると、49年に国内の原発はゼロとなってしまう。
これでは、原子力産業の将来が見通せず、原発技術を担う人材も育たなくなろう。これから30~40年かかるとされる福島原発の廃炉作業にも支障が出かねない。
最新の原発を開発し、運用することで、高い原子力技術を維持できる。政府は、原発を新増設していく方針を明確化すべきだ。
◆最終処分に道筋つけよ
電力不足に悩む新興国に安全性の高い日本の原発を輸出することは、日本の成長に資するだけでなく、国際貢献にもつながる。
エネルギー資源の乏しい日本にとって、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは必要な政策である。放射性廃棄物の容量削減など、メリットは大きい。
ところが、日本原燃が青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場の完成が当初予定から20年近く延期されるなど、計画の遅れは深刻である。着実な推進が求められる。
原発の活用では、放射性廃棄物の最終処分場の確保は避けて通れない。候補地選定に道筋をつけることが肝要だ。
2015年01月18日 01時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150117-OYT1T50120.html
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