2016年12月
30Kmほど沖の海上で2130頃より海兵航空隊のMV-22やCH-53(大型輸送ヘリ)などが夜間空中給油訓練を行っていたところ、1機のMV-22がタンカー機の給油ドローグのホースをローターで切断してしまったという。
ホースとは言っても庭で水を撒くようなものでなくワイヤなどの入った頑丈なものであり、先端のロックする部分は金属であるから当たり方によってはタダでは済まない。
MV-22はローターを損傷し機体は激しい振動を生じる状態となり、当該機機長(海兵隊大尉)は普天間基地への緊急帰投や嘉手納基地への緊急着陸なども断念し、機体を海岸に不時着させる措置をとったという。
損傷した機体を20~30Kmほど飛行させ、海岸の浅瀬にハード・ランディングさせたわけだが、お陰で地上に被害を出さないのは勿論乗員も5名全員が生還できている。
ちなみにタンカーは空軍のC-130と言うから特殊作戦用のMC-130だったのであろう。
空軍は特殊作戦用にCV-22オスプレイを擁しておりこれも空中給油を行うが、空中給油の装備や要領は海兵隊のオスプレイも同様である。
空中給油は昼間の視界の良いときであってもなかなか難しい技であるし、ジェットと違いオスプレイやヘリなどは気流の乱れることの多い低高度でこれを行わねばならないし、夜間とくれば猶更である。
現代の航空作戦では空中給油は必須であり、実戦では訓練した以上のことは出来ないわけであるから、空中給油は昼夜間共に常日頃からよく訓練しておく必要がある。
こんな感じでタンカー機から給油を受けるわけである。大きさも違う異機種が極めて接近して飛行するわけで当然危険は伴うので住宅地の上空などは避け海上などで訓練する。DoD Photo
これは空軍のCV-22オスプレイの空中給油の様子。
オスプレイは機首にある伸縮式のプローブを伸ばしてタンカー機が繰り出すドローグにロックさせ燃料給油を受けるわけだが、技量が上達してくればいかなる状況でも簡単にキマルのだろうが、ヘタッピだと時間ばかりかかるどころかタンカーのほうもぶつけられそうで怖いことだろうか。
ちなみにオスプレイの巨大な複合材製ローターは地面などに接触した場合は、ほうきの様にバサバサになり、旧来型のヘリのそれのように破片を飛散させて乗員や周囲に危害を与えることのないようになっているという。
海兵隊司令のニコルソン中将の事故説明記者会見。
ニコルソン中将は海兵隊小隊長、中隊長から始まった人であり兵科は「歩兵」ということになる。 実戦部隊の指揮官であり武人であるから、広報官や記者会見専門の報道官みたいに若くてハンサムで物腰もソフトなわけにはいかず印象は些か厳めしいのだが、言っていることは極めてまともである。
社会的に関心の高い事故発生にあたって責任部門の長である海兵隊司令官が、顔は少々悪くとも自ら早速記者会見・質疑応答説明にあたる姿勢は好感が持てよう。
朝日新聞などによると、沖縄県の安慶田(あげだ)光男副知事が抗議申し入れしたところ、「ニコルソン氏は「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」と抗議に不満を示したという。安慶田副知事によると、オスプレイの飛行停止と配備撤回を求める抗議文をニコルソン氏に手渡し、抗議したが、ニコルソン氏はかなり興奮した様子で「(事故を)政治問題にするのか」と言ったという。安慶田副知事は「県民はオスプレイの配備も訓練も認めていない」と述べたが、ニコルソン氏は最後まで怒りが収まらない様子だったという。 安慶田副知事は面会後、報道陣に「謝罪は全くなかった。本当に植民地意識丸出しだなと感じた」とあるのだが(朝日記事;米軍高官「被害与えず、感謝されるべき」 沖縄副知事に 2016年12月14日15時51分)、副知事との面会はこの記者会見の直前であるわけだが、ニコルソン中将にはそういった様子は感じられないのだが?
副知事がウソを言っているというのでは無いが、一方の主張主観のみ報道するのでなく実際にどのような会見でのどのような言葉(日本語は話さないだろうから英語であろう)だったのか?報道機関たる者は事実を確認して報道するべきだろう。新聞社やTV局などは直接取材したり記者会見で質問したり出来る立場なのであるから。
どうも日本の報道機関というのはジャーナリズムと言うよりも、大衆煽動のデマゴギー的存在だろうか。
残念なことである。
「絶対事故の起きないように」との心構えは大切なものとしても、機械である以上そして操作するのが人間である以上事故発生の可能性は存在するものである。
普天間基地というのは街中にあるといい、同基地の辺野古移転を早期に実現させることが責任ある沖縄県や政府の行政の要職にある人の責務であろう。
☆追記;
下部に引用したのは朝日新聞社の「社説」なのだが。
朝日新聞と言えば色々言われてはいるが日本を代表する歴史ある全国紙新聞社のひとつなのだろうし、事件や事故の報道にあっては関係諸機関に直接取材できる立場の公共性をもつ新聞社であろう。
蓄積されてきた資料も持つだろうし、有名大学を出た所謂頭の良い優秀な社員も多いことだろうし、その高い見識と深い洞察力で、オレのような低学歴無知無教養のその他大勢の一般大衆を訓導し、世論を形成させる力も持つのだろう。
「新聞は社会の木鐸」などと言う古い言葉もあったろうか。
「墜落」との認識こそふさわしいのだそうだが、飛行機が「墜落」というのはアンコントローラブルな状態になりパイロットは機体をどうしようもなくタダ落下することだが、この場合「墜落」であれば沖合に落ちているであろうし、乗員が全員生存ということも考え難いであろう。
今回のは夜間給油訓練中の接触事故であり、オスプレイの機体構造やシステムに根本的欠陥があって生じた事ではないので、夜間給油訓練は一時停止するとはしても、同機の運用を当面飛行停止することが「当然」とするのは根拠が無い。
「許しがたい米軍側の態度・暴言」があったものとしているが、非公開の副知事と海兵隊司令官との面談での会話であり、一方の副知事の主張ばかりを取って、許しがたい態度と暴言があったものとしてしまう以前に、朝日自身で具体的にどのような会談でのどのような言葉であったのか、海兵隊司令官側にも確認するべきであろう。
会話中の一部分の言葉のみを取った場合には主旨が異なることはあり得、英語の問題もあり得る。
米軍側に許しがたいような態度や暴言を吐かねばならない理由がちょっと考えられないことであり、健全な懐疑心と確認というのはベテランの新聞記者ならずとも、社会生活でのものごとのイロハであろう。
住民に被害が生じるような墜落事故の発生を大変心配しているようだが、であれば遅れている辺野古沖合への普天間基地移設を進める以外ないのではないか。
「米軍要らね。」ということであれば、日本の安全保障政策の基本が変わることであり、ではどのようにして日本国の安全を確保して平和と繁栄と国民の自由を保障してゆく方策があるのか?を朝日は示さねばはじまるまい。
「墜落キターッ!」と「待ってました!」と言わんばかりの、反射的なセンセーショナル狙いの一読して知性が疑われる社説では、日本を代表する大手新聞社の一つとして哀れであるばかりか、日本人一般の知性すらも疑われる懸念が現実になる。
金を払ってこれを読ませられる朝日新聞購読者というのは気の毒である。購読者・社会を向いた報道姿勢を求めたい。
これでは報道機関としてもはや限界だ。
◆◆◆朝日新聞社説
(社説)オスプレイ大破 懸念が現実になった
2016年12月15日05時00分
米軍や政府は「不時着」だというが、翁長知事が示した「墜落」との認識こそふさわしい。
沖縄県名護市で米軍の輸送機オスプレイが事故を起こした。海岸の集落から300メートルほどしか離れていない浅瀬に、大破して横たわる機体の残骸は、事態の深刻さを雄弁に物語る。
許しがたいのは米軍側の態度である。日本国内でのオスプレイの運用を当面停止したのは当然だが、在沖米軍トップの四軍調整官は抗議した副知事に対し「パイロットは住宅や住民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」と話したという。
占領者意識丸出しの暴言というほかない。政府は事実確認のうえ、発言の撤回と謝罪を強く求めるべきだ。
この事故と暴言は、沖縄が直面している現実を、多くの人に改めて思いおこさせた。
墜落の恐怖、騒音の苦しみ、奪われる普通のくらし、重大な事故・事件をくり返しても反省しない米軍、県民より米国の顔色をうかがう日本政府……。
オスプレイは12年秋から米軍普天間飛行場に順次配備され、いまは24機にまで増えた。事故機はその中の1機だ。
同飛行場をめぐっては、オスプレイも含め、夜間早朝や人口密集地上空での飛行を制限する日米合意がある。だが県の測定によると、制限時間帯でも1日平均で10回を超える騒音が記録され、有名無実化している。
先月あった爆音訴訟の判決で那覇地裁沖縄支部は「米軍と国によって、住民に対する違法な被害が漫然と放置されている」と、厳しく指摘した。
また、本島中部の宜野座(ぎのざ)村では先日来、オスプレイが水タンクをつり下げて民家上空を飛行する訓練を行っている。地元の抗議を米軍は無視し、政府は有効な手を打てないでいる。
来週20日に普天間飛行場の移設をめぐる辺野古訴訟の最高裁判決が予定され、22日には米軍北部訓練場の一部返還がある。返還といっても、オスプレイの離着陸帯の新設が条件になっており、基地機能の強化との受けとめが沖縄では支配的だ。
そんなときに起きた事故である。政府が対応を誤れば、県との間の溝はさらに深まる。
米軍に原因の究明と徹底した情報公開を迫るのはもちろん、同様の事故が起きたとき、日本側も調査に関与できる仕組みの導入を働きかけるなど、県民・国民を向いた対応を求めたい。
沖縄の負担はもはや限界だ。これを軽減する道を、いま一度根底から問い直す。「墜落」をその契機にしてほしい。http://www.asahi.com/articles/DA3S12706279.html?ref=editorial_backnumber
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