防衛省によれば、8月29日0558頃北朝鮮西岸のスナンから北東方向に発射、0605から0607頃にかけて北海道渡島半島および襟裳岬上空を通過、0612頃襟裳岬の東約1180Kmの太平洋に落下したという。
飛翔距離は約2700Km、最高高度は約550Kmであったと推定している。
こんな感じか。
北朝鮮の発表によれば今回の発射は、「侵略の前哨基地であるグアムをけん制するための意味深長な前奏曲」であり、「107年前、「朝日合併」という恥ずべき条約が交付された血の8月29日に残虐な日本の島国夷がびっくり仰天する大胆な作戦」を「朝鮮労働党委員長で共和国国務委員会委員長、朝鮮人民軍最高司令官である党・国家・軍隊の最高指導者金正恩同志が、朝鮮人民軍戦略軍の中・長距離戦略弾道ロケット発射訓練を現地で指導」し、「わが人民の胸に積もりに積もった恨みを晴らしてくれた」ものという。
稀世の天が賜った名将最高指導者、わが共和国の国家最高尊厳金正恩元帥はそれとして、今回の飛翔経路を眺めてみると、津軽海峡上空を飛翔させるものであったことが解る。
無暗に日帝島国夷を刺激してしまうことを避け、北海道渡島半島や本州側の下北半島の陸地上空を極力避けるとすれば、自ずと発射可能な延長線上の地域は決まってくるわけで、今回順安の平壌国際空港が発射地点として選ばれたものであろう。
日本の陸地上空を極力避け津軽海峡上を飛翔させるとすれば計画としてはこのようなものになるであろうか。 今回の発射飛翔経路では襟裳岬上にかかったといい、飛翔コースは些か北に上がり過ぎているようである。
火星12弾道ミサイルは発射に際してはTEL(発射台車両)への損傷を避けるため、TELからミサイルと発射台座を外して陸上に設置しており、発射地面はレベル(水平)で、直立させたミサイルの発射自重に耐えるもの(コンクリート)である必要がある。去る5月14日の発射ではコンクリートで固めた発射地点をわざわざ用意している。
発射地点として順安の平壌国際空港を今回利用しているが、空港であれば滑走路エンドや誘導路末端部などのコンクリート舗装部分をそのまま利用出来よう。
国際空港を弾道ミサイルの発射演習に使うというのは奇異に映るが、「平壌国際空港」とは言っても乗り入れている外国エアラインはAir Chinaのみであり、特に早朝であれば飛んでいるのはカラスくらいなものであろう。
火星12弾道ミサイルというのは発射準備が些か面倒であり且つ発射地点も限られてしまうことになるが、火星12のTELには着脱式のタイヤ保護スカートがあり、実戦の場合においてはTELへの多少の損傷発生は厭わずにTELより発射するものと考えられる。
反帝・反米対決戦を総決算する最後の聖戦の決戦兵器である核戦略ミサイルであれば、次発を考慮する必要性はない。
今回の飛翔距離は2700Km程といい、4000Km程と推定される火星12の最大射程より随分と短い。
高度を高くとる等の特異な飛翔でもなく、着弾地点の太平洋の先は太平洋であるから特段射程を短く設定する必要性も考えられず、また超重量の弾頭を積むということも考え難い。
だいいちこの射程ではグアムには届かず、これでは客席に音が届かない音楽会みたいなものでグアムをけん制する前奏曲になるまい。
火星12は液体燃料の一段目と小型のブースターロケットを持つ弾頭部(PBV)よりなる弾道ミサイルであり、PBVのブースターロケットがうまく点火しなかったとか、一段目ロケットの燃焼が不完全停止した等の不具合の発生があったものと考えられる。
「日本海上空で三つに分離した」とのニュースもあるが、火星12には見ると一段目切り離し用のブレーキング・ロケットモーターの覆いと思われるものも見えるので、切り離した一段目とPBV、そしてPBVより分離する弾頭の三つである可能性は考えられる。
MRV(複数弾頭)というのは現在の北朝鮮の技術レベルでは考え難い。
接続部のフェアリングのようなものや不規則分解、レーダーエコーの誤差のようなこともあるようであるから今後の解析待ちであろう。
今回解ったことは、火星12の誘導制御技術は未だ貧弱なものであり、現状ではグアムに対して4発を周囲近海に正確に同時挟叉弾着させるなどは大変難しく、強行すれば何処に弾着するか解らず「虎の尾を踏む」ことになってしまう可能性が高そうである。
それにしても無警告で他国に向けて核攻撃用の弾道ミサイルを発射するというのは前代未聞。
こんなことを続けていれば、いつか航行船舶や航空機、日本陸地の住民などに死傷被害が発生してしまう可能性がある。
8月29日発射の火星12。早朝のいっ発。
☆興味をひいた他のブログ。夫々の見解が示されている。
North Korea’s Missile Test over Japan By David Wright
North Korea’s Hwasong-12 Launch: A Disturbing Development By Michael Elleman
脅威に対する数理的アプローチ 北朝鮮の「火星12」に迫る 久保田 隆成