Bandoalphaのらく書き帳

故郷離れてはるばる千里、ひとつ山越しゃ他國の星がぁ・・・昭和の終末高齢者! 思い付いた時に思いついた事などのテキト~なメモ書きらく書き帳ですぅ。 桧野俊弘 ご意見メールは:Bandoalpha@msn.com

イラン

日本のイラン核開発問題外交

民主党のルーピールーキーで、党の最高顧問(外交担当)であるという、鳩山由紀夫元首相がイランに渡航し、イランの大統領らと会談して来たという。

「お願いだから、いらん事だけはせんでくれ!」と言う、政権や民主党、野党はじめマスコミ、有識者の一致した意見だったようだが、民主党の「最高顧問」であり、それも外交問題が担当というのだから、寧ろ党員に諭す立場であろうし、ここは”外交は斯くあるべし”と最高顧問自ら率先躬行してみせたのであろう。

鳩山氏の外交能力というのは、先の普天間問題の迷走ぶりで定評のあるところであり、この人が出てきてイランの核開発問題解決が、無用に掻き回されたり後退したりする事こそあれ、何か前進するような可能性はゼロであることは皆が解っていたろう。

事実何も成果は伝えられていないし、米国の報道関係ではHatoyama元首相がイランを訪問したことすら報道されていない。

「鳩山先生」と中国からは呼ばれて、その功績を高く評価されているようだが、米国にすれば、「ものごとを只引っ掻き回すだけの愚か者」でしかないのであろう。

東大工学部卒、スタンフォードで工学博士だそうであるから、工学的センスは優秀なのであろうし、鳩山家に生まれさえしなければ、進む畑を誤って世界に恥を晒すこともなかったろうから、ある意味気の毒な人なのかも知れぬだろうか。

核査察をするIAEAが、「二重規準で不公平な機関である公平ではない」と言う点では大いに意気投合したようだが、イランは核開発は飽く迄平和利用目的であると主張しており、鳩山氏はイランに”トラスト・ミー”と諭されて帰国したようだ。

イラン核開発問題での、日本の国際外交はこれで終わったな。

こうゆう人物を「最高顧問(外交担当)」に据えて置かねばならぬところが、民主党という政党の限界なのであろう。


◇◇◇引用:読売新聞NET

鳩山氏に外相苦言「イラン発言を口外しないで」

玄葉外相は10日午前の閣議後の記者会見で、政府の中止要請を無視してイランを訪問した鳩山元首相と9日夜に電話で会談し、「元首相(の発言)と外から見られるので、よく思いをいたしてほしい」と鳩山氏に伝えたことを明らかにした。

 電話は、イランから帰国した鳩山氏からかかってきたという。玄葉氏は、鳩山氏に対し、訪問中のイラン側の発言を口外しないことを要請した。

 イランから帰国した鳩山氏は9日の記者会見で、イランのアフマディネジャド大統領との会談で、国際原子力機関(IAEA)批判を行ったとイラン政府が発表したことについて、「完全な捏造だ」と述べた。一方で、大統領との会談について、「核保有国を対象としないで、非保有国の平和利用に対して査察を行うことは公平でないことは承知しているが、日本は国際社会の疑念を払う努力を進めてきた、と話した」と説明した。

 鳩山氏は帰国後、在日イラン大使館に「(発表の)真意を問いただしたい」として抗議した、という。

(2012年4月10日15時25分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081229-507405/news/20120410-OYT1T00466.htm
◇◇◇

コリジョン・コース

1月末に続くIAEAの2月21・22日の訪問でも、イランは核兵器開発が疑われる施設(Perchin)への査察を拒否したという。(

イランは高濃縮ウラン(HEU)の製造を継続しているといい、朝日新聞(引用下記)によれば20%HEU保有量は現在13.8kgに達しているという。

通常の原子力発電用燃料は数パーセント程度の低濃縮度であるから、20%という「Weapon Usable Grade」のHEUをイランは一体何の”平和利用”のために製造しているのか?大いに疑問が湧くところだろう。

HEUは原子力動力艦艇の燃料に使用されたり、研究用に使用されることはあるだろうが、イランには原子力艦艇など勿論無いし、発電用原子炉も輸入に頼り自国での開発能力は無いのだから、何かの研究開発用にHEUがこれほど大量に必要な筈も無い。(参考

純粋な民生用の平和利用目的とするには、やはり無理があろう。

核爆弾というのは、理論的には20%HEUでも核爆発反応を引き起すことは可能なのだそうだが、通常は85%+くらいに濃縮したHEUを使用するといい、20%HEUを製造する濃縮技術があれば85%+HEUに再濃縮することに技術的な問題は無く、容易なのだという。

イランは核兵器の保有を目指しているか、或いはそのように見せかけてイスラエルや欧米による武力攻撃を誘引しているのか、或いは単に趣味でウラン濃縮をしている、と言うところになるだろうか。

核兵器というのは、1発で相手国の国家機能を壊滅させることを可能とする究極兵器であり、核兵器を保有してしまえば、世界はその現実を追認する以外なくなるだろうし、イランは核保有国として中東で突出した影響力を誇示出来ることになるだろう。
超大国パワーの象徴でもある核兵器は、”愛国者”達にとっては魅惑的なものなのだろう。

イランが主張する通りに純粋な平和利用目的であるのであれば、軍施設内に秘密施設など設けずに、疑惑を持たれる事なく世界にオープンな形で、IAEAへの報告もその義務を怠らずに、その査察にも誠実に応えればよさそうなものだが、そうゆう姿勢転換が容易に出来るようであれば、そもそも今日の状況まで問題は拗れては来ないわけか。

経済制裁もイランの主要取引先である中国などは同調しておらず、いわばバケツに穴が開いている話だろうし、国民の困窮や民意と言ったものに左程の配慮を必要としない体制の国家であろう。
経済制裁をしなければ、イランは堂々着々と核開発を進めるだけだろうから、イランの翻意を促す世界の意思を示すという意義はあるだろうが、経済制裁だけでイランの姿勢転換を促すことは難しそうである。

イランが核兵器保有に成功した場合、中東の周辺諸国も核保有に進む可能性は高いのだろう。
究極兵器である核を相互に保有することで、中東の紛争が反って終焉する可能性も無くは無いだろうが、中東地域で核兵器が使用され、或いは偶発事故の発生で、世界のエネルギー供給に支障を生じる可能性のほうが遥かに高いだろうか。
イランの核開発は、あらゆる手段でこれを阻止する、という選択肢しかないことになろうか。

特に自国の存在を否定する相手が核保有することになるイスラエルにとっては、国の存亡の問題であるから、看過することは出来ないであろう。

一定の時点で、イスラエルはイランの核施設を空爆などで破壊する行動に出ると思われるが、幸か不幸か、シリアは国内情勢が混沌としている。同国空軍は健在なのだろうが、その防空体制の隙をついて、或いは実力でこれを排除することは可能だろうし、隣のイラクは米軍撤退直後であり新生空軍のF-16戦闘機は年内は米本土で訓練中である。イラク上空は妨害されることなく使用が可能である。

ただ、イスラエルが使用出来るバンカーバスターは装備・機材の関係で貫通力の弱い小型の爆弾のみであるから、堅固な地下施設そのものを破壊することは困難であろう。
地上施設等は兎も角として、堅固な地下施設目標に対しては地下施設そのものでなく、坑道通路部などを対象にする以外ないだろうが、困難さを伴い確実な破壊は期し難いところがあるだろう。
中途半端な攻撃結果に終った場合には、反って間違ったメッセージをイランに与えかねまい。

イランの核開発施設を武力攻撃で破壊し、核開発の意思を断念させるには、集中した戦力投入で相応に大規模な被害を与える必要があることだろう。

これを実行するのは、その装備と機材を有する、米軍が行うのが望ましいこととなる。

国際紛争解決の外交というのも、力を行使されて相手の実力を知ってこそ、真摯な外交交渉が成り立つというのも又事実だろうか。

先日のWSJ紙に、米軍がイラン戦準備で対機雷戦能力や対高速艇対処能力の向上などを図っているとの記事があったが、記事中にイランの保有する機雷は、「露・中国製の2~3,000個」と従来思われていたが、最新情報では保有機雷は5,000個に増えているのだという。(
おそらくは中国製機雷などを国産化し、量産しているのであろう。

1991年の湾岸戦争で、フセイン・イラクはクエート沖に1,200個の機雷を敷設している。
これの掃海には、戦争終結後に派遣された日本の掃海艇を含めて、9カ国の掃海艇部隊40隻で、3ヶ月半を要したという。

現在米海軍には掃海艇というのは14隻があるのみである。(
英はじめNATOや湾岸諸国も参加するとはしても、イランが周辺海域で機雷戦を実施した場合には、相当困難な事態も考えられようか。

日本は武力による国際紛争解決を否定し、飽く迄も話し合いによる平和的解決を”国是”としているのであろうから、たしかにも少し積極的外交でその信念とするところを世界に示してもよさそうなものであるのだが。(イラン危機回避へ日本も役割を果たせー日経社説

参考:海自掃海隊群

◇◇◇引用;朝日新聞
「イラン、ウラン濃縮加速」 IAEA、核問題で報告書
2012年2月25日12時11分

国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)事務局長は24日、イラン核問題の報告書を理事国に配布し、イランが新たに本格稼働した地下のウラン濃縮施設で、核兵器開発に近づく濃縮度20%のウラン製造を加速させていると指摘した。また、先の高官級調査団の再三の要求に応じず、核関連施設への立ち入りなどを認めなかったイラン側の非協力的な対応も強く批判した。

 報告書を受け、米欧とイランとの緊張が高まり、再開を検討しているイラン核協議の行方に影響が出る可能性もある。イランの核開発を最大の脅威と見なすイスラエルによる軍事力行使の懸念も高まっている。

 報告書によると、イラン中部コム近郊のフォルドゥ地下に建設された施設に濃縮ウランを製造する遠心分離器約700基を設置。イラン側の説明では、濃縮度20%のウランがこれまでに約13.8キロ製造された。

http://www.asahi.com/international/update/0225/TKY201202250223.html
◇◇◇

イスラエルのイラン核施設攻撃は4月~6月?

「イスラエル、今春にイラン核施設攻撃か…米紙」、との記事が日本の新聞に出ていたが。(引用下記)

元記事になっている米紙ワシントン・ポストの記事というのはこれであろう。
Is Israel preparing to attack Iran?

目的は全くの平和利用なのだそうだが、イランはウランの濃縮を進めており、数発分の核弾頭の製造に十分な量の濃縮ウランを蓄えつつある。
十分な量の濃縮ウランと核兵器化技術を確保すれば、あとは指導者の命令ひとつで核保有国になる事となる。

イスラエルは、十分な量の濃縮ウランが、攻撃・破壊の難しい堅固な地中深くの施設に貯蔵されてしまう前に、NatanzやQomなどの核プロセス施設を破壊してしまう積りである。
その時期は、この4月から6月辺りになる、と米国防長官は見ている、という話のようだ。

ヒズボラによるロケット攻撃など、イラン側の報復も予想され、イスラエル市民500人程度の死傷が発生しえるのは想定しているという。

記事ではイラン核施設破壊の方法についての明確な言及は無いのだが、弾道ミサイル攻撃では、ピンポイントで地下施設等の破壊は難しいであろう。
空挺により地上部隊を投入し、核施設を占拠・破壊出来れば一番確実だが、エンテベではないので、イラン軍の抵抗を排除出来るほどの規模と装備の部隊を、低速な輸送機群で、片道1500Km+の距離を、それも非友好国上空を経由して進出し、更に作戦終了後に部隊を撤収させ得ると考えるのは、非現実的だろう。

現実的な手段は、やはり航空作戦での空爆ということになるのだろう。

イランの核施設は各所に点在し、しかも地下施設化されている所が多い。
全ての核施設を攻撃対象としたのでは、投入作戦機は百単位の機数が必要になるだろうし、現実的には攻撃対象は数箇所の重要施設に絞り込む必要がある事だろう。
ヨルダン、シリアの国境上空からイラク上空を通り、イラク上空かペルシャ湾上で空中給油、バンカーバスターを搭載した攻撃隊と制空掩護隊がイランの目標上空に殺到して、爆撃し帰還するというところになるだろうか。

Qumなどの堅固な地下施設は完全には破壊出来なくとも、関連核施設を破壊することで、”イランの核兵器開発の時計を数年戻す”ことは可能であろう。

イランも攻撃されれば、報復・反撃の行動に移るのだろうから、弾道ミサイルをイスラエルに発射したり、ホルムズ海峡を封鎖したりという事態が生じ、米欧も参戦してゆく事態に発展しかねない。

ここ暫くは、イランを巡って”一触即発”のきな臭い状態が続くだろうか。
そして、結局はどうなるのか?だが。



◇◇◇引用:読売新聞

イスラエル、今春にイラン核施設攻撃か…米紙

【ワシントン=山口香子】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は2日、パネッタ米国防長官が、イスラエルが今春、イランの核施設を攻撃する可能性が高いと分析していると報じた。


 記事は、同紙の著名コラムニスト、デビッド・イグナチウス氏が執筆した。同氏は、イラン核開発に対するイスラエルの認識について〈1〉イランが近く、地下深くの施設に爆弾製造に十分な濃縮ウランを貯蔵し終わると予測している〈2〉貯蔵完了後は、単独攻撃による兵器開発阻止は難しいと危惧している――との見方を示した。パネッタ長官は「そうなる前の4月か5月、6月」に、イスラエルが攻撃を行う可能性が高いと見ている、とした。

 長官は同日、訪問先のブリュッセルで、「コメントしない」と記者団に語り、報道を否定しなかった。また、イスラエルのバラク国防相が2日、イラン攻撃に言及したことについて、米国は「懸念を伝えた」と述べ、自制を求めたことを明らかにした。

(2012年2月3日11時16分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120203-OYT1T00386.htm
◇◇◇

バンカーバスター GBU-57B MOP

IAEAの29-31日のイランとの会談は終了したそうで、次回は2月21-22日に会談が予定されているようである()。

イランの石油が近い将来に枯渇するということはないだろうし、安全面への配慮を考えれば原子力発電というものは決して安価なものでもない。
福島やチェルノブイリではないが、下手をすると”自爆装置”に成りかねない危険性すら孕むものであろう。
医療用に高濃縮放射性物質が必要ということであれば、外国からの輸入でも十分な筈であろう。

ヒズボラを支援するイランに核兵器保有の兆候が少しでも見られれば、イスラエルは座してこれを眺めるようなことは決してないであろうし、そうでなくても安定しているとは言い難い中東情勢に”火に油を注ぐ”ような核開発は、少なくとも今やるべき事ではないだろうが、そんな事情は百も承知の上で、イランは核開発を進めているのだろうから、IAEAもなかなか解決は難しいことだろうか。

今後の推移で、IAEAの査察では”埒が明かない”ということになれば、イランの地下核施設を物理的な力で破壊して、核開発をストップさせる以外なくなる。

欧州はどうか知らないが、アメリカは軍事力行使も選択肢としているし、勿論イスラエルも軍事力行使を躊躇はしないであろうから、イランの核開発が一定のポイントに達すれば、アメリカかイスラエルが、イランに対して実力を行使することになるのであろう。

空爆という方法があるが、イランの核施設は山岳部の地下に設けられており、それもコンクリート等で補強された相当堅固な地下施設であることが考えられる。
91年の湾岸戦争で登場した、「GBU-28 バンカーバスター」のような地中のコンクリートを貫通して爆発する特殊爆弾を使用する必要があるが、この種の爆弾でアメリカが保有する最も貫通力の高いものは、GBU-57という総重量3万ポンド(13.6t)という爆弾で、MOP(Massive Ordnance Penetrator)と呼ばれるものだという。

このMOPの貫通力というのは、Global Security Org.によれば以下のようだという。
60 meters (200 feet) through 5,000 psi reinforced concrete
40 meters (125 feet) through moderately hard rock
8 meters (25 feet) through 10,000 psi reinforced concrete

WSJの記事によれば、MOPは20発ほど調達されているというが、イランの核施設というのは少なくとも200ft以上の地下にあり、MOPでも破壊効果不十分と予想されるので、更に貫通力を向上させる改修を行なうのだという。(

どんなに深い地下施設でも出入り口は地表にあるから、出入坑道をGBU-28等で潰し、地下施設にもMOPで一定の破壊効果を与える、という方法も考えられるようである。

イスラエルはMOPは保有していないが、GBU-28は購入保有しており、これの貫通力向上改修やあるいは何か新型を開発していても不思議ではないだろうか。

B-52より投下試験の、GBU-57B MOP。
実戦ではB-2が搭載して、米本土より直接侵攻し使用することになるのだろう。
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イランの軍事力

EUがイラン原油を輸入禁止する前に逆に欧州向け原油輸出を止めてやる!とか、核開発をやめる積りは無いとか、ホルムズ海峡の封鎖は簡単だとか、相変わらずイランは意気軒昂なようである。

さてその力の背景となる軍事力だが、イランにも陸・海・空軍があり、更に2008年に空軍より分離独立した防空軍の、4軍があるという。

更に独立した組織として、「革命防衛隊」(Army of the Guardians of the Islamic Revolution)というのがあり、これも陸海空軍及び、対外工作活動等にあたる特殊作戦軍(Quds Force )よりなるという。
民間防衛・民兵組織である「バシィージ」(Basij)というのも、この革命防衛隊が掌握しているのだという。

国防軍組織が、通常の「軍」と「革命防衛隊」という指揮命令系統が全く異なる非合理的な2重構造になっているのは、現体制は1979年の革命による暴力で権力を奪取した政体であり、自身が最も危惧するものは軍部によるクーデターや民衆蜂起など力による政体転覆であろうし、イスラム革命の志操堅固な精鋭親衛隊である革命防衛隊を設置することで、軍内部や民衆内の反イスラム革命行動に目を光らせているのであろう。

イラン国軍はイラン国土を防衛し、革命防衛隊はイスラム革命を守る、というところのようだ。

イランが装備する兵器体系は、革命以前の米英供与兵器も一部未だ現役だというが、第一線の近代兵器群は、中国、ロシア、それに北朝鮮より導入されている。

元来が陸軍国なのであろう、イラン国軍、革命防衛隊ともに陸上戦力に重点が置かれているようで、陸上兵力が突出しているが、陸戦の王者である機甲戦力(戦車)は国産戦車の開発もしていると言うが、主力はロシア製、中国製であり、北朝鮮の「天馬号」戦車を導入運用しているというのも興味深い。

海軍は英国流のようだが、駆逐艦やフリゲートといったイラン海軍の”大型艦”は、近代的な米欧海軍に対抗出来るようなものではなく、奇襲による開戦など余程な状況でもない限り、有事の際は早期に無力化されると思われるが、中国製対艦ミサイルを搭載した小型ミサイル艇群は、数も多く、これを完全に掃討するには相当な日時を要することも考えられ、ホルムズ海峡はじめペルシャ湾の艦船に相応な被害を生じせしめる可能性はあるだろう。
士気が高いと思われる革命防衛隊海軍の主力装備も、小型ミサイル艇である。

20隻あまりの潜水艦勢力は注目される。
現在17隻就役しているという国産小型潜水艦(Ghadir級)は、北朝鮮の技術協力によるものといわれ、魚雷発射菅を2門装備しており、艦船雷撃や機雷の敷設、特殊部隊の浸透作戦能力を持つものと思われる。
小型潜水艦は、平均水深50m、最深部でも90mという、25万平方キロの比較的狭く浅いペルシャ湾での活動に適したものだろう。
3隻のロシア製最新型ジーゼル潜水艦キロ級(Kilo級)は、大型であり作戦行動日数も長いので、ペルシャ湾内よりもアラビア海での活動を指向したものであろう。
隠密性の高い潜水艦勢力は今後も増強が続くと思われるが、20隻あまりの潜水艦を捕捉し、その戦力を完全に殲滅するには相当な日時を要することも考えられ、海上船舶交通には脅威となりうるだろう。

イランに陸上侵攻して、海岸線をはじめ数百キロの縦深地帯を制圧すれば話は別だが、潜水艦、小型ミサイル艇、機雷敷設、陸上発射型自走式対艦ミサイル・ランチャーを、航空作戦だけで完全に阻止・殲滅するにはかなりな日時を要するだろうから、イランが一定期間、ホルムズ海峡はじめ沿海部の海上輸送を阻止する能力は持つと見るべきだろう。

空軍の保有する作戦機には、革命以前の米製供与機と、それ以後に導入されたロシア、中国製の機材が混在しており、”多種雑多”な機種構成となっている。
ロシア製・中国製の機体も含め、大部分が旧式機であり、とても今日の米欧の航空戦力に対抗出来るものではない。
イラン空軍の航空作戦遂行能力には、自ずから限界があるだろう。

国産戦闘機の開発も行っているのだという。
革命前に供与された米製F-5を、ノンライセンスでほぼ丸ごとコピー生産したもの(HESA Azarakhsh)があり、それを改良した新型戦闘機(HESA Saeqeh)が近年飛行しているが、機体の基本設計が旧式で、性能改善には限界があるものであり、量産配備したところで米欧の現用戦闘機にとても対抗出来るものではない。
この新型戦闘機は量産配備が進んでいないようであるが、弾道ミサイルなどの非対称戦力の整備拡充のほうに傾注するというのは、寧ろ賢明な選択であろう。

米欧の航空戦力に拮抗出来るような近代的な空軍を建設することは当面不可能であるから、防空作戦は航空機には頼れず、対空ミサイルなど高射部隊を主体としたものに成らざるを得ず、近年空軍から対空ミサイル等を運用する高射部隊を独立させて、防空軍として一元的な運用としたのは、納得出来る改編であろう。

もっとも注目されるのは、弾道ミサイルであろう。

海峡封鎖の主力となる対艦ミサイルは中国系だが、周辺諸国への投射火力となる弾道ミサイルは、北朝鮮の技術支援を得ていると言われる。(
元々はソ連の設計になる射程数百キロのスカッド・ミサイルも北朝鮮から輸入しているようだが、北朝鮮がスカッド・ミサイルをベースに拡大改良した中射程弾道ミサイル、ノドン(射程~1,500Km)の技術がイランに渡っているとされ()、「シャハブ(Shahab)」の名称で生産配備され、これの射程延伸改良が継続されている。
シャハブは1型から3型までの存在が知られており、3型の射程はほぼ2,000kmに及ぶと言われるから、イスラエルはじめ中東全域に投射火力が及ぶことになる。

射程を延伸するに従い命中精度は普通は落ちるものと考えられ、弾道ミサイル自体が元々ピンポイントで目標を狙うものでなく、面制圧火力であることを考えると、イスラエルはじめ中東周辺諸国の軍事目標や重要目標をピンポイントで攻撃破壊することは難しく、シャハブ・弾道ミサイルというのは寧ろ都市部などへ火力投射する事で政治的な効果を狙う兵器なのであろう。
シャハブ等の弾道ミサイルの運用は革命防衛隊が全て担っているというのも、戦略兵器としての位置付けなのであろう。

3,000km+の射程を持つといわれる「ムスダン」も、2005年に18発が北朝鮮からイランに渡っていると言われるが、存在は今のところ確認出来ない。 この種の弾道ミサイルをベースにしたものが生産配備されれば、欧州の大半が射程に入ることとなるだろう。

更に射程を延伸して、米本土を攻撃出来る弾道ミサイルの開発を指向しているとの説も有るが、技術的経済的に可能であれば、そのような戦略兵器の保有に向かうことは不思議ではない。

戦略兵器である以上、シャハブなどの弾道ミサイルに、核弾頭の搭載を可能とすることを目指すのは、寧ろ自然であろう。

イランと相互に弾道ミサイルの技術協力関係にあるとされる北朝鮮も、弾道ミサイルを核兵器の投射手段と考えている事は興味深い。

北朝鮮が2009年にテポドン2号を打ち上げた際、イランの技術団がこれに立ち会っていたとの話がある。(
弾道ミサイルの開発について、イランと北朝鮮は相互に密接な技術交流を進めているものと推察されるが、日本がイランに支払っている年1兆円あまりの原油代金などの豊富な資金を投入し、開発したイランの核弾頭技術が、北朝鮮に渡り、日本を標的とするノドンなどの核弾頭として装着されるとしたら、笑えない話となるだろうか。

米国は予算面の制約から国防予算は今後大幅に圧縮され、軍備縮小の方向にあり、陸上兵力は8個旅団を廃止して常備49万の態勢になるという。
イランに本格的に陸上侵攻しようとすれば、50万+の陸上兵力は必要だろうし、現在の米欧諸国の情勢で、陸上侵攻可能な兵力と戦費を結集する事はかなり難しいところであろう。

空爆だけなら、国民が結集こそすれ、体制が崩壊することは無い。
米欧は陸上侵攻はして来れない。
一定期間ホルムズ海峡など海上オイル・ルートを封鎖するのは可能であるし、イラン自身にも影響はあるが、米欧など世界経済に大きな打撃を与え、上手くすれば国際社会の結束も綻び、イラン制裁など吹き飛んでしまう可能性も考えられよう。
かなりな事態に進展したところでイランは存続する。
相当強気な判断をイランがしているとしても、不思議ではないだろうか。

参考:
Wiki: Armed Forces of the Islamic Republic of Iran

Globalsecurity org: Iran Military Guide

「シャハブ3」と言うのか、なかなかマッシブな弾道ミサイルで迫力がある。
発射機はトレラー形式のようで、北朝鮮のものよりも簡便である。
Shahab3B.jpg

イランの国産新型戦闘機「Saeqeh」。 F-18と同等の性能だという。確かに尾翼は同じく2枚なのだが・・・
手前の機体はエアインテーク形状とエンジン排気ノズルが違っているので、露もしくは中国辺りから入手した適当なエンジンに換装したものだろう。
しかし、F-5Eの垂直尾翼を2枚にしただけに見えるのは気のせいだろうか。
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