これまでのBMDシステム開発で最大規模となる実用実験が10月25日に実施されたという。

Ballistic Missile Defense System Engages Five Targets Simultaneously During Largest Missile Defense Flight Test in History

弾道ミサイル3発(MRBM1発、SRBM2発)および巡航ミサイル2発の同時集中攻撃という、異種ミサイルによる複合脅威の実戦的シナリオ状況下で、以下の陸海空軍BMD戦闘統合部隊が応戦している。

DDG-62 USS Fitzgerald (Aegis 3.6.1 BMD Destroyer)
THAAD射撃隊 (32nd AAMDC)
Patriot PAC-3射撃隊 (94th AAMDC)
AN/TPY-2(FBM):Forward-Based Mode(前進配備警戒レーダー)
C2BMC (Command, Control, Battle Management, and Communications):BMD戦闘統合指揮情報システム


「Flight Test Integrated (FTI)-01」と称されるこの実用実験は、西太平洋のクェジェリン環礁(Kwajalein Atoll)にある、ミサイルの試験観測・評価設備の整った「REAGAN TEST SITE(RTS)」を中心として行われている。

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RTS Photo US ARMY

Ronald Reagan Ballistic Missile Defense Test Site

イージス艦はRTS周辺海上。
THAAD射撃隊はRTSのMeck島に展開。
Patriot PAC-3射撃隊は、レーダ(AN/MPQ-65)および指揮管制はMeck島に展開し、ランチャー(LS)は近傍のOmelek島に展開。

状況:
ウェーキ島北方空域でMRBM(E-LRALT標的ミサイル)をC-17輸送機より投下し発射。
AN/TPY-2FBM等が目標を探知し捕捉。C2BMCの統制指揮下、リアルタイム戦域情報をイージス艦、THAAD射撃隊及びPatriot PAC-3射撃隊に伝送。
巡航ミサイル(MQM-107標的)が、RTSのRoi-NamurよりMeck島に向け発射。
巡航対艦ミサイル(BQM-74E標的)が、ガルフストリーム機よりイージス艦に向け発射。
SRBM(ARAV-B標的ミサイル)が、ウェーキ島より発射。イージス艦のAN/SPY-1レーダがこれを探知し捕捉。
Meck島に展開したTHAAD射撃隊がMRBM(E-LRALT標的ミサイル)をAN/TPY-2TM(Terminal Modeー射撃管制レーダ)で捕捉、これをTHAADミサイルで迎撃。
イージス艦が、捕捉したSRBM(ARAV-B標的ミサイル)をSM-3 Block1Aミサイルで迎撃。
巡航ミサイル(MQM-107)をMeck島のPatriot PAC-3射撃隊がAN/MPQ-65レーダで探知し捕捉。これを近傍のOmelek島に展開したLS(ランチャー)のPAC-3ミサイルで迎撃。
対艦ミサイル(BQM-74E)をイージス艦が捕捉し、SM-2 BlockⅢAミサイルでこれを迎撃。
クェジェリン環礁の北東海上よりSRBM標的が発射。Meck島/Omelek島に展開したPatriot PAC-3射撃隊がこれを探知・捕捉し、2発目のPAC-3ミサイルで迎撃。

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FTI-01概略図 MDA

射撃結果:
THAADは、MRBM標的ミサイルの迎撃に成功。THAADによるMRBM標的ミサイルの実迎撃は今回が初とのこと。
Patriot PAC-3は、巡航ミサイル標的およびSRBM標的の同時迎撃に成功。
AegisBMD艦は、SM-2 BlockⅢAによる対艦ミサイル標的の迎撃には成功したものの、SM-3 Block1AによるSRBM標的迎撃は命中しなかったという。原因は後日の発表待ちだが、SM-3の射撃はしているので、それ以降の段階で何らかの不具合があったことになるだろうか。
日本のイージスBMD護衛艦「ちょうかい」の同ミサイル射撃で標的に命中しなかった事案(JFTM-2)を思い出すが、これは弾頭の「divert and altitude control malfunction」が原因といい、該SM-3弾固有の問題であったというが、状況はよく似ているように思える。

評価:
AegisBMD艦のSM-3Block1Aこそ命中しなかったものの、他の弾道ミサイル標的や巡航ミサイル標的の同時迎撃には全て成功しており、陸海空軍が現有する弾道ミサイル防衛機能の統合運用能力が実証されている。
弾道ミサイルと巡航ミサイルの複合脅威下での統合戦域BMD能力が実証されたわけだが、北朝鮮のようなところは高度な巡航ミサイルは保有出来ないので、寧ろ中国が今回の実用実験結果を深刻に受け止めることだろうか。

BMD弾道ミサイル防衛はレーガン大統領のSDI(宇宙ミサイル防衛)構想より始まるが、SDIは衛星からレーザー射撃で弾道ミサイルを宇宙空間で破壊するのだとかいうSFモドキの奇想天外なもので、実用化には誰が考えてもかなり疑問のあるものであったが、コンピュータはじめ科学技術の進歩により、弾道ミサイルをミサイルにより迎撃するBMDシステムが今では現実に可能なものとなっているのは感慨深いものがある。

Fox Newsによれば今回のFTI-01の費用は$188Mだという。 実動の正味時間は30分程であるから、”1分で5億円”ということになろうか。
ちなみに、1985年以降投じられたBMDシステム開発費は$186Bに及ぶと言う。


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2009年北朝鮮の弾道ミサイル試験に備え、防衛省市ヶ谷グランドに展開した航空自衛隊のPatriot PAC-3。
PAC-3はイラク戦争でイラク軍のSRBM迎撃にも成功しており、BMDとしては最も完成されたシステムだろうか。
野戦機動運用のポイント・デフェンスの小型のミサイルであり、射程が短いのが難点だが、今回のFTI-01でも運用されたLSのリモート配置は、その難点をある程度カバーする手段として注目されようか。


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THAAD部隊 大気圏内での迎撃であるPAC-3の上層、大気圏外も迎撃範囲とする新規開発のBMDミサイル・システム。 部隊への初期配備が始まったばかりだが、最近の試験では連続して迎撃成功を収めており、性能は安定しているように見える。
このシステムのレーダAN/TPY-2はTM(Terminal Mode)としてTHAADミサイルの射撃管制に使われるとともに、レーダ単体でFBM(Forward-Based Mode)として前進配備警戒レーダとしても使用される、非常に解像度の高い強力なXバンド・レーダだという。
TMとFBMとの切換えは単に運用方法だけなのか、あるいは何かハード・ソフトなどを交換するのかは不明。今度機会があったら聞いてみよう。
AN/TPY-2FBMは現在青森県車力に配備されているが、もう1基を日本の南域に配備する計画だという。
Photo: Lockheed Martin


DDG62Pizza (468x311)
AegisBMD駆逐艦 DDG62 USS FIZGERALDの科員食堂。 日本の海上自衛隊では週末は各艦秘伝の”海軍カレー”だが、米海軍では週末の食事はピザという艦が多いようである。
どちらも子供の頃から馴染んだ味であり、嫌いと言う声は聞かず、思わず”やったア”と若い隊員の顔がほころぶものである。

海上自衛隊のカレーレシピ
福神漬けの汁、焼肉のたれ、蜂蜜、ワイン、ブランデー、ケチャップ、味噌・・・隠し味として各艦、各部隊いろんなものを入れるようである。
コーヒーを入れてコクを出すのや、タバスコという手は最近おぼえた。
そういえば、Sよ子さんとこでは隠し味に「コーラを入れます」とか言っていたが、試してみるのは、さすがに躊躇するのだが。