Bandoalphaのらく書き帳

 おっさんのブツブツですぅ。 脱力系あるいはガッカリ系ブログとでも申しましょうか、その時その時の思いついた事の、テキト~なメモ書き、らく書きですぅ。       至らない点につきましては、ご指摘を戴ければ嬉しいです。 ただ、ご指摘を戴いても、進歩・学習する能力がねえ~                                                                Toshi Hino/桧野俊弘 Bandoalpha@msn.com                                                    

マレーシア航空機撃墜事件・ウクライナ

事故調中間報告書

一昨日だったか、もう今年の夏も終わりだなと思い、冷蔵庫の奥に見つけた缶ビールを「さらば今年の夏よ!」と飲んでいたのだが、今宵はなにやらもう肌寒さを感じるようだ。
北緯47°、さすが此処は北国である。

マレーシア航空のMH17便だが、オランダの事故調査委員会が9日に「Preliminary Report (中間報告)」を公表している。

Preliminary report - Crash involving Malaysia Airlines Boeing 777-200 flight MH17」 - Dutch Safety Board

MH17便の墜落したウクライナ東部は武装勢力の支配地域であり、墜落現場に入ること自体なかなか難しく、未だに遺体の収容すら完全には終っていないといわれる。

本来であれば当件の事故調査はウクライナが主管するところであるが、今回はMH17便の出発地であり且犠牲者を最も多く出しているオランダの運輸安全委員会(DSB)に事故調査が委託されている。

オランダDSB主導の下、マレーシア、ウクライナ、ロシア、英国、米国、豪州などが調査に協力する形となっている。
墜落現場の事情からして、客観性などからも、妥当な調査態勢であろう。

出発地スキポール空港での当該機の整備記録ではNo1エンジン(L/H)のオイルを追加したのみで、機体や機体各システムに異常は認められていない。エンジン・オイルの消費も規定値内のものであった。
給油もされて同機は7月17日10:31(UTC時間)完璧な状態でクアラルンプールへ向け出発している。

運航乗務員は長距離路線ゆえ交替要員を含め2組(2名+2名)乗務していた。いずれの乗務員の運航資格、健康記録ともに問題は認められない。

CVR(コックピット音声記録)、FDR(飛行データ記録)も解析の結果、コックピットでの異常を知らせる警報音や乗務員の異常な会話などは無く、FDRもエンジンはじめ機体システムに異常は認められていない。
CVR、FDRともに事故日(7月17日)の13:20:03(UTC時間)に記録停止している。

機体は順調に飛行中に、突如として破壊が生じていたことになる。

機体の破壊は、機体外部よりの、高い衝撃力を持った多数の物体の貫通により、機体構造が破壊され空中で分解しながら落下したものと推定している。

機体の墜落域は、約10kmX5kmの広い地域に散らばっている。

中間報告書は、MH17便が地対空ミサイルなどの大型弾頭により破壊されたことを強く示唆しており、これまで言われてきたことと一貫性がみられよう。

ロシアだけは別の見方をしており、ウクライナ軍のSu-25攻撃機がMH17便と同じ高度におり当該機を追尾(攻撃)していたとしているわけだが、中間報告書はMH17便の周囲に飛行中であった他の民間航空定期便機については記述があるが、「Su-25」機については一切記述は見られない。
Su-25機がエアライナー機と同高度域をもし飛行していたのであれば、衝突の危険があり、航空管制から周辺エアライナー機に注意警報が出されて良さそうだが、ATC記録にもそのようなことは見当たらない。

当日の気象は曇りで、所々雷雲の発生がみられる気象であった。

MH17便は13:00時航路上の雷雲を避けるためダイバートをATCリクエストし、航空路L980より20NM(37km程か)左にダイバートしている。
13:19:53時のレーダー情報ではL980センターラインより3.6NM(7km弱)北にあった。
このような当該機の運動を眺めていた地上の地対空ミサイル射撃員が、”こいつは軍用機”と誤判断し、高度の判定なども誤って、「誤射」に至った可能性は考えられるところだろうか。

事故調査委員会の調査目的は、事故原因を究明して事故再発防止策を考え、航空の安全運航の向上に資する事にあるわけで、原因の究明はするわけだが、「誰が殺ったのか?」の犯人の究明というのは、国際司法機関によることになる。

今後は墜落現場に入れるだろうし、冬が来て一面の銀世界になってしまう前に、草の根を掻き分けて丹念に探せばミサイル関連の部品などが発見出来る可能性があるし、そうなればミサイルの種別を判定することも可能であろう。

ジャーナリストのBukミサイル目撃談や、地域住民のBukミサイル・ランチャーとロシア訛りの乗員の目撃談というのもあるし、丹念にひとつひとつ検証してゆけば、何処で何が行われていたかを明らかにすることも不可能ではあるまい。

b8d561e3.jpg

MH17便墜落地帯。DSBレポートより。 コックピットなど機首部分がかなり離れて落下しているので、機首部位が最初に分解分離していたものと思われる。

Ceasefire

「停戦」協定が成立したという。

先週始めからのウクライナとロシア両大統領の電話会談による合意に基づき、金曜(9月5日)には隣国ベラルーシのMinskで、ウクライナ、ロシア、”ドネツク人民共和国”、”ルハンスク人民共和国”それにOSCEの代表も交えて、停戦協定が締結されている。(OSCE

実質はウクライナとロシア間での停戦協定であるが、ロシアはウクライナに対する軍事的干渉は一切行ってはいない(ロシアの声)、という公式姿勢であるから、この地域の平和の実現を誠実に希求する我がロシアの積極的仲裁活動により、紛争発生の責任者であるキエフ政権と、地域人民の唯一の正当な代表である、ドネツク人民共和国およびルハンスク人民共和国の間において、停戦が成立する運びとなった、と言うところだろうか。

ドネツクやルハンスクの親露派武装勢力というのは、各種傭兵の寄せ集めを主体とするもののようで、その資質はあまり優秀とは言えず、ロシア製最新兵器・重火器の供与や、浸透したロシアの軍事顧問の作戦指導下でもウクライナ軍に対して劣勢であり、8月下旬にはかなり圧迫されて、そのまま鎮圧されてしまう気配さえ窺えたが、戦車・装甲車・自走砲それにSA-22自走地対空ミサイルなどを装備する火力・機甲・防空力の充実した、すくなくとも機械化旅団規模以上と思われる有力なロシア軍部隊が、東部および南部国境地帯より侵攻し、形勢は逆転している。

国境南方海岸地域に新たな戦線が形成されれば、東部で戦闘中のウクライナ部隊は側面を脅かされ、下手をすれんば包囲されるから攻勢どころでなくなる。
それまでの攻勢から守勢防御配置に態勢を転換するわけだが、ロシア軍火力はその余裕を与えず、精密な集中火力発揮で随所にウクライナ軍を破砕していたようだ。
備蓄弾薬類はおろか、戦死者の収容も出来ずにこれを遺棄したまま後退した様子などがYoutube等に映されている。
捕虜も数百人規模で出したようであり、ウクライナ軍前線部隊は”潰走”したといってよいのだろう。

さすがはロシア陸軍、”格の違い”を見せたというべきか。

元々が常備軍57,000という(Wiki)小規模なウクライナ陸軍であり、戦力の回復には時間が要るであろうし、今後は、東部の親露派武装勢力にたとえ攻勢を掛けたところで、ロシア軍が何時でも参戦して来ると言うのでは作戦の勝算など到底成り立たないことになる。

ロシアにとっても、戦闘参加する以上損害が皆無とはいかないので、戦傷者が増えてくれば、国内報道規制には成功していても、人の口伝で戦争の実態が広まり、折角これまで高めてきたプーチン政権支持への不信拡大にも繋がりかねない。

停戦発効ともなれば、高まっていたロシアへの経済制裁発動も、経済制裁はお互いに痛みを伴うことであるから、制裁発動は”もういんでね”という国や意見も出てこようか。

今回の停戦協定締結への環境条件は整ってきていたというところだろうか。

停戦の発効に伴い、ロシアは人道支援のトラック隊を再度ウクライナ東部に送るというが、前回も人道支援活動であるからキエフ政権の承認や国際赤十字の同道なども不要としていたが、今回ドネツク人民共和国やルハンスク人民共和国もそのウクライナでの特別な地位が承認されたことであるし、今後は両国からの要請で人道支援は行えるのだろうから、ロシアのウクライナ東部への影響力は格段に強まるのであろう。

ウクライナとロシアとの国境は陸路2,000kmほどのようだが、東部南部地域の紛争地帯の国境は1,000km弱であろうか。
停戦の監視や紛争地国境の監視はOSCEが担うことになるといい、現在20名に満たない監視要員を60名に増員しその後も要員を確保して増員するのだとはいうが、非武装(軽武装?)のOSCE監視要員を排除するのは容易なことであろうし、国境地帯で兵器や戦闘員の流入をOSCEが確実に監視出来ると期待するのは難しいであろう。

プーチンのロシアにとってみれば、かつての東欧同盟諸国を欧米は次々と侵蝕して来ており、軍事同盟に他ならないNATOは今やポーランドや、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト海三国までもその手中にしている。
東欧諸国での経過をみれば、放って置けば何故か欧米”西側”に傾倒してゆくのは明らかなこと。
ウクライナが現在「非同盟中立」とするのも、欧米に傾倒し、NATO加盟に至るためのステップに他ならない。
”ロシアの柔らかい下腹部”であるウクライナに、欧米NATO軍が進駐し、黒海にNATO海軍の基地が出来てしまうような事態は、プーチンにとってロシアの安全保障上決して容認出来ないという事なのであろう。

ウクライナは、クリミア半島の奪還はもちろん、東部国境地域も施政権を放棄してロシアに委ね、”新たな国境の新生ウクライナ”として早々にNATOに加盟して、集団安全保障の中で国の安全を保持して欧州の一員として歩むか、或いは、終生NATO非加盟をプーチン様に誓い、ロシアの”同盟国”としてその隷属の下に生きるか?、の現実的な選択を今後迫られることになるだろうか。

bef3ea6a.jpg

All Not Quiet on the Eastern Front

「All Quiet on the Western Front - 西部戦線異常なし」は、第一次大戦を舞台とした小説・映画であるが、ウクライナ東部戦線はなかなか異常なしとはいかないようだ。

ウクライナ東部では最近ウクライナ軍が攻勢を強めていて、親露分離派勢力はその支配地域を縮小せられていたというが、ここに来て東南部の海岸地域で、火力機甲戦力に優れた有力な部隊が攻勢をかけて来、「Novoazovsk」という町が水曜夜半には占領されたという。

この辺りにはそのような強力な親露派勢力は存在しておらず、国境を越えて侵攻して来た、戦車や装甲車、自走砲を伴うロシア軍部隊による攻撃だという。

東部戦線でもロシア軍がウクライナ国内に侵攻布陣し、ウクライナ軍への砲撃等直接の攻撃を行っていると言う。

これまでもウクライナ東部の親露分離派勢力への武器供与をはじめ、ロシア領内からの攻撃等、”軍事顧問”としてのロシアの隠然たる関与は知れていたことであったが、ここへ来て白昼公然と部隊規模で参戦してきているようである。

ウクライナ東部では親露派勢力が、”ドネツク人民共和国”の設立を宣言する等していたが、”首都”のドネツクがウクライナ軍に包囲されるなど、芳しからぬ状況から、”せっかく蒔いた種の芽を、摘み取られてたまるか!”というプーチンの決意の顕われの行動なのであろう。

電撃総力戦でウクライナ全土を掌握するようなことは今は無理としても、ウクライナ東部を掌握し、クリミア半島への陸路も確保しておきたい、というところだろうか。

隣国の主権を蹂躙するあからさまな武力侵攻であり、ロシアの意図を断念させるには、経済制裁だけでは無理で、ウクライナへの強力な武器供与支援の開始などが考えられるが、オバマには出来まい。

 国防予算削減で、空軍のA-10攻撃機全機を用途廃止にするのだとの話があるが、要員の教育、弾薬類、今後10年間の運用経費も含めて、A-10を330機、まるごとウクライナに供与でもすればよいものを。

気の毒な話だが、ウクライナの将来はあまり明るくはないような・・・

0b792e92.jpg

ウクライナ政府による戦況図。(Ukraine National Security & Defense

c4f17884.jpg

ウクライナ領内をゆくロシア軍砲兵部隊自走砲車列。(NATO
ロシアはウクライナ領内の自軍の存在を完全否定しているので、正確には、「ウクライナ領内の国籍不明のロシア軍部隊」である。

87987777.jpg

ウクライナ領内でのロシア軍砲兵部隊の布陣。(NATO)

DPRPrimes (480x360)
”ドネツク人民共和国”の初代首相と2代目。(注:テキヤのおやぢではない)
どちらの人物も経歴は判然としない。ちなみに初代はロシア人だという。

欧米とロシアは冷戦の時代に進みそうである。

日本にとってロシアと、そして中国は隣の大国。 ”敵の敵は味方”の論理で、ロシアと中国は今後友好関係を深めることだろうが、”弱肉強食、力が正義”のロシアのやり方が成功し世界に通用してゆけば、中国の東支那海などでの対日政策をも、勢い付かせることであろうか。

Buk地対空ミサイル・システム(SA-11)

ウクライナ上空でのマレーシア航空MH17便撃墜に使用されたとみられる、「Buk地対空ミサイル」であるが、70年代に開発が始められ(1972年開発着手)、80年より部隊配備が開始された「野戦機動型地対空ミサイル・システム」であり、その後も改良型が順次登場し、現在も改良型の開発が継続されているものだという。

世界十数カ国で使用されており、艦艇搭載型(SAN-7)もあるというから、所謂”使い勝手の良い”なかなか優れた対空ミサイル・システムなのであろう。

開発に当っては、ソ連の開発主任(Ardalion Rastov)らはエジプトに出向き、当時行われていたイスラエル空軍との”地対空ミサイルによる防空戦闘の実相”を見聞している。

当時使用されていた野戦機動型地対空ミサイルは、「2k12”Kub”(NATOコードネームSA-6)」であるが、イスラエル空軍に対しそれなりに損害を強いてはいたものの、将来のシビアな防空戦闘に於いてはその欠点も露見されている。

1.Kub高射隊は、目標捜索レーターとミサイル射撃管制レーダーを装備した「レーダー・ミサイル射撃指揮管制車」を中核に、「ミサイル発射台車両」4台ほどより構成されるが、この”一元管理”方式では、レーダー・ミサイル射撃指揮管制車がやられてしまうと、ミサイル発射台車両がたとえ無傷で残っていても対空戦闘能力は完全に喪失してしまう。

2.相手がデコイ(欺瞞体)を多用して攻撃して来た場合、一時に一目標に限られる対処能力では、デコイに処している間に敵機の侵入を許してしまう。

Buk開発に当っては、Kubの後継システムとして全般的な性能向上は勿論として、上記2点が重視され、結果、「目標捜索レーダー」と「高射隊全般指揮管制」、そして「ミサイル射撃管制レーダー」を其々別個の車両とし、ミサイル射撃管制レーダーはミサイル発射台車両に塔載(transporter erector launcher and radar -TELAR)し、発射台車両単独でもミサイル射撃を可能とし、且つ高射隊配備TELER台数(最大管制数6台)分の「多目標同時対処能力」を付与している。(当時の技術では、現在のように一台のミサイル射撃管制レーダーで同時に多目標の迎撃処理ということは、未だ出来ていない。)

初期型の「Buk-1(9K37-1)」に続いて、1983年には改良型の「Buk-M1(9K37M1)」が導入開始され、更に1988年以降には「BukM1-2(9K37M1-2)」や、フェーズドアレイ・レーダーを導入し本格的な同時多目標処理能力(24目標同時捕捉4目標同時迎撃)を備えた「Buk-M2(9K317)」といった改良型が開発されたが、ソ連邦の崩壊によりこれらの生産配備は一時中断し、2000年代に部分的に近代化のうえ生産配備がなされている。
 これら新型Bukに対しては、NATOコードネームもBuk-M1までの「SA-11」とは区別して、「SA-17”Grizzly”」と新しく付されている。

ウクライナ軍が装備しているのは「Buk-M1」であり、ロシア国防省によるマレーシア航空機撃墜事件説明でも(ウクライナ軍の)「Buk-M1」としており、米国防省の情報解析の結果も使用されたミサイルは「SA-11」と発表しているので、今回のマレーシア航空777機撃墜事件で使用された地対空ミサイルは、「Buk-M1」であった可能性が高い。
 
★以下「Buk-M1(露型式名9K37M1。NATOコードネームSA-11”Gadfly”)」について述べる。

Buk-M1地対空ミサイル・システムの構成

@:高射隊の全般射撃指揮管制「コマンド・ポスト」車両-「9C470M1」
@:目標捜索レーダー(9S18M1。NATOコードネームSnow Drift)を塔載した車両-「9C18M1」
@:ミサイル射撃管制レーダー(9S35M1。NATOコードネームFire Dome)を装備し、ミサイル4発を塔載するミサイル発射台車両-「9A310M1」(TELER)
@:ミサイル8発を積載出来、うち4発のミサイルは発射も可能なミサイル運搬車両-「9A39M1」(TEL/Loader)

64ccc58e.jpg

左より、コマンド・ポスト車両、”Snow Drift”目標捜索レーダー、TELER、TEL。右隅はミサイル収納コンテナーを積載した輸送トラック。

・なお使用されるミサイル本体の型式名は「9M38M1」、最大射程35km最大射高22,000mという。
・コマンド・ポスト車1台で6輌までのTELERの管制運用が可能である。
・ミサイル運搬車両TELはミサイル発射機能は有するが、ミサイルの射撃管制レーダーは持たないので、ミサイルの発射誘導管制はTELERに依ることとなる。次発ミサイルの運搬・装填が主目的であるTELはTELERに隷属するかたちになる。

bd191a6c.jpg

Buk-M1高射隊編制の一例。

以上の車両は全て装軌式車両であり、戦車、装軌式装甲車と同等の不整地走破能力を有し、NBC(核、生物、化学兵器)戦防御能力を備え、ミサイル射撃態勢の布陣、撤収はいずれも5分以内と迅速であり、戦車師団など機甲部隊に随伴して機動展開し、地対空ミサイルによる”防空の傘”を提供することを可能としている。

目標捜索レーダー(9S18M1 ”Snow Drift”)は、360度を4.5秒と6秒のモードで全周サーチし、6目標の同時捕捉が可能という。
同レーダーの最大探知距離については160km、137km、85km、高度100mの目標で35km等々種々の数値が見られるが、レーダーリフレクションは目標によってかなり違う(例えば同じ大型爆撃機でもB-52とB-1Bのそれは100対0.75といわれ、B-2やF-22、F-35といったステルス機ともなれば、目標が視認されるのにスコープ上には未だ映らないということすら生じる)ので、条件が不明な数値は一応の目安程度のものであろう。

Buk-M1は、IFF(Identification friend or foe-敵味方識別応答機)の他に、「non-cooperative target recognition(NCTR)」と称されるユニークな彼我識別機能を持つ。
これは機種によるレーダーリフレクションの微妙な相違をデータ照合することによって、戦闘用機種や民間大型機とを識別するものという。

錯綜する戦場上空では、探知目標の彼我識別というのはなかなか難しいところがある。
被弾しIFF応答が出来ない友軍機も出るだろうし、敵性機であっても投降・亡命のケースも有り得、状況によっては第三国の軍用機や民間機が探知されることもあるであろう。
「NCTR」は、複数の彼我識別装置を併用することによって、中近東地域のような錯綜した空域での敵味方の識別を確実にしようとするものであろうが、大型民間機を其の侭軍用にしているような場合もあるので、限界もあるであろう。

コマンド・ポスト車は、隷下高射隊各車両機器および上級司令部とデータリンクを持ち、戦域全体状況を把握し、目標の探知、識別、捕捉、迎撃優先度の設定、迎撃TELERの選定、目標迎撃の成否などを把握し、防空戦闘の全般指揮を司るものであろう。

迎撃ミサイルの発射はTELERで行われる。
コマンド・ポストより指定された目標を、塔載するミサイル射撃管制レーダー「9S35M1(Fire Dome)」で捕捉し、CW(連続波)を目標に照射して、発射された迎撃ミサイル「9M38M1」はCW反射波に乗って目標に接近、ミサイルの頭部レーダーシーカーが目標を捕らえた後はミサイル自身が目標にホーミングしてこれを撃破する。

TELERには”Karat”と呼ばれるEO System(エレクトロ光学システム)「9Sh38-3」が装備されている。
サーマル・イメージ、レーザー波を使用した光学システムといい、夜間や気象を屈服して目標を画像視認することが出来るようである。
ミサイル射撃管制レーダー「9S35M1」を使用せずに、EO Systemにより指令誘導で迎撃ミサイルをそのレーダーシーカーの目標捕捉範囲まで誘導し、迎撃することも可能であるという。

Krat (480x566)
EO System「9Sh38-3」。光学イメージ、サーマル・イメージ、レーザー測距機能を持つという。

TELER単独でミサイルを発射管制し目標を迎撃することも可能なわけであるが、その場合にはレーダーサーチ範囲の余裕や彼我識別の能力はかなり制限されたものとなる。

英国筋の報道であったか、今回のマレーシア航空機撃墜では、”ロシアより持ち込んだTELERを単独で使用したのだ”との話があったが、反政府勢力が確保しているのはウクライナ東部の狭い地域であり、規模の大きいシステマチックな高射隊編制より、TELER車両単独で運用している可能性は高いであろう。

マレーシア航空の777が撃墜されたウクライナ東部の飛行制限高度であるが、ウクライナの航空当局は7月14日に軍のAn-26が東部で撃墜されて以降、高度32,000ft以下を飛行禁止としていた。(当該An-26は高度6,500m-21,000ftーを飛行中であったという。それ以前の飛行制限高度は26,000ft以下であった。ちなみに作戦行動する軍用機は航空当局の規制適用除外である。)
 ロシアの航空当局も、7月17日零時(MH17便撃墜事件発生の日である)より、ウクライナ東部と接するロシア領空域での高度32,000ft以下の飛行制限NOTAMを通達している。

ロシアの飛行制限高度もウクライナのそれに単純に合わせたとも考えられるが、NOTAMは管轄する空域の航空当局がその責任に於いて通達するものであるから、ロシアの「32,000ft以下」という高度もなにか判断とする独自の基準・根拠があったものと考えられようか。
 紛争状態にある両国の関係も考えれば、ウクライナもロシアも其々の判断根拠に基づいて飛行制限高度を設定し、それがどちらも32,000ftということであったろうか。

ロシアとウクライナは、Buk-M1地対空ミサイル・システムの開発生産国、配備運用国である。

TELER単体でミサイル発射、目標迎撃する場合には、目標の彼我識別にはEO Systemでの目視確認が大きな役割を担うと思われるが、EO Systemでは高度1万mまでは目視確認は難しいのではあるまいか。
Buk-M1でのTELER単体で運用する場合のマニュアルのようなものを根拠として、32,000ft以下という高度が出てきたとも考えられようか。

”Buk-M1地対空ミサイルの運用講習”を受けても、右から左の”ウクライナ反政府軍の酔っ払いおやぢ”なのか?、”ウクライナ友情支援”の越境ロシア兵なのか?は知らないが、粗雑粗暴な儘に、マレーシア航空機に対しミサイルを撃ったということなのだろうか・・・

9M38M1 (426x640)
輸送用コンテナーより取り出し機能検査中の9M38M1ミサイル。”機能検査異常無し”となれば、TELERあるいはTELに塔載して発射準備完了となる。 ミサイルは10年間整備不要であるという。
白いレドームにレーダー・シーカー「9E50M1」、その後ろの検査機器を当てている部分が近接信管「9E241M1」収納部で、後ろに70kgという弾頭が収納される。近接信管は目標の17m以内で作動し、爆発弾頭からは無数の硬金属片を飛散させ、目標を覆い確実にこれを撃砕する。

d952b5a4.jpg

弾頭の飛散パターン

a7d5cf42.jpg

ネットで出回っていたBukミサイルの不発弾頭とみられるもの。「9H314」との表記が見える。内部に硬い金属の小片が詰まっている。


<参考>
AIR POWER AUSTRALIA

Buk Missile System Lethal, But Undiscriminating-Aviation Week

Buk missile system-Wikipedia

MADE in the USSR: BUK SAM! (English subtitles)」-Youtube :露語英訳の問題なのか?解説に疑問点はあるものの、当該ミサイル・システムの概要が理解出来る。

R-60 AAM

7月21日のロシア国防省のマレーシア航空機撃墜事件説明で、ロシアが”犯行容疑者”として名指していたのは、ウクライナ軍のBuk-M1地対空ミサイルと、同じくSu-25攻撃機であるが、犯行容疑のウクライナ空軍のSu-25がMH17便撃墜に使った”凶器”として、「R-60 AAM(空対空ミサイル)」の名が挙げられていた。

R-60 AAMが民間機に対して使用された事例がある。

1988年8月に、ボツワナの政府専用機BAe-125-800Aが、飛行中に、アンゴラ空軍のMig-23からR-60AAM2発による攻撃を受けたと言う。

一発目がNo2エンジンに命中して同エンジンが脱落し、2発めのR-60は落下するNo2エンジンに命中したという。

被弾した同機は何とか墜落を免れて、不時着に成功し、搭乗していたボツワナの大統領以下乗員は全員生存している。

Aviation Safety Network -Criminal Occurrence description

BAe125-800Aはビジネスジェットであるが、双発のエンジンの1基にR-60が命中したが、何とか不時着出来たのは、R-60AAMの弾頭が3Kg~3.5kg程度と小型であることによるものであろう。

R-60はIR(赤外線)ホーミング・ミサイルであるが、なかなか精確に最も大きなIR源であるエンジンに、命中するようだ。

777に対してR-60で攻撃した場合、同AAMは777のエンジン部に命中する確立が高い。

エンジンは破壊され、消火に失敗すれば火災が生じようが、直に主翼の構造部などが破壊されてしまう事態にはなりそうにない。

少なくとも非常事態を通報する時間的余裕はあるであろうし、両エンジンがやられたとしても、不時着に成功する可能性も十分に考えられよう。

今回のMH17便は非常事態通報の間もなく、瞬時に破壊されているので、R-60AAMが使用された場合とは状況が大分異なるといえよう。

R60M (480x640)
スロバキア空軍のR-60AAM。小型の短射程AAMである。

Su-25は30ミリ機関砲を装備しているが、空対空射撃で777を撃墜するのは、R-60AAM使用よりも遥かに難しくなる。
それも高高度性能の劣る機体で、一航過の一撃で確実に777のコックピット部などの破壊を計画し、それが実行出来るとするなどは、現実的な話ではない。

ウクライナ空軍のSu-25は、7月16日に1機、MH17便撃墜事件後の23日にも2機が撃墜されているという。 ウクライナ東部の親露派分離勢力への対地攻撃に、Su-25は相当に投入されているようであるから、MH17便が撃墜された17日にもSu-25が東部空域で作戦中であったことは考えられるが、同機がMH17便を撃墜したとする根拠は否定される。
ギャラリー
  • Jアラートそしてミサイル防衛
  • Jアラートそしてミサイル防衛
  • Jアラートそしてミサイル防衛
  • 火星12再び日本上空へ向け発射
  • 火星12再び日本上空へ向け発射
  • 車輪の一歩
  • Enough is Enough
  • 今度は水爆実験だとか
  • 襟裳岬
最新コメント
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: